第49期王位戦 特集

攻守変え3度目決戦 七番勝負 行方は
対談:中原誠十六世名人×渡辺明竜王

今期王位戦の見どころを語り合う中原誠十六世名人(右)と渡辺明竜王
今期王位戦の見どころを語り合う中原誠十六世名人(右)と渡辺明竜王

 深浦康市王位(36)が初防衛に成功するか。羽生善治名人(37)がふたたび王位を手にするか。夏の将棋界を彩る第49期王位戦七番勝負が14、15日、網走市で行われる第一局で開幕する。A級にも返り咲いて充実の時を迎えている深浦王位。一方の羽生挑戦者も先の名人戦で復位を果たし、十九世名人の資格を得たばかりで絶好調。王位をかけた対決は3度目。最終局までもつれ込んだ前期にも増して、大激戦が期待される。七番勝負に先立ち、タイトル戦経験が豊富な中原誠十六世名人と若手の旗手渡辺明竜王に勝負の行方を占ってもらった。


中原誠十六世名人―深浦に自信、接戦か
■16期連続出場
 ―羽生名人の挑戦で前期と同じ顔合わせになりました。
中原 橋本崇載(たかのり)七段との挑戦者決定戦は羽生名人の圧勝でした。
渡辺 名人を取ったばかりだったので、若手には負けられない。かなりプレッシャーのかかる将棋ですが、さすがです。
中原 橋本七段はいずれまた挑戦者として出てくるでしょう。
渡辺 若手からすると羽生名人の壁は厚いです。
中原 十六期連続七番勝負出場、すごい記録です。
渡辺 今年、竜王戦に羽生名人が出れば、この一月からすべてのタイトル戦に出ることになります。最近の勝ちっぷりはすさまじい。
中原 しかし名人戦の三、四局目を見ると、ものすごく調子が良いという感じはありませんでした。好調ではありますが。
渡辺 羽生名人の持ち味は、中、終盤の正確さ。トッププロでも勝負が決まる終盤で間違えることが多い。羽生名人は間違えることがほとんどありません。
中原 終盤は悪手の海を泳ぐようなもの。しかし羽生名人はミスが少ない。オールラウンドで、羽生名人ほどバランスが良い棋士はめずらしい。
渡辺 若手も羽生名人の影響でどんな戦法も指そうという棋士が増えました。やはり強い棋士のまねをしたがるものです。七冠時代、僕は奨励会でしたので対戦していませんが、棋譜は並べていました。年齢を重ねて円熟したように思います。
中原 七冠を達成して目標がなくなったのか、一度、王座一冠まで落ちたことがありました。いまはまた大山康晴十五世名人の持つ最多タイトル数を抜くとか、目標ができました。

■前期も名勝負
 ―深浦王位の調子は?
中原 今期は対局数が少ないように見えますが、七局くらいなら普通です。対局が少なくても、自分で調整し、仕上げてくるでしょう。A級に復帰するなど、調子は悪いわけがないでしょう。
渡辺 しかし羽生名人がこれだけ勝っていると、深浦王位は嫌でしょう。が、そこは気にせずにリーグ戦が始まる前から「羽生さんが出てくる」と話していました。
中原 心の準備はできている。
渡辺 去年の第七局、羽生名人はくやしかったでしょう。深浦王位にとっては作ったような終盤でした。
中原 控室でだれも分からなかった手を、渡辺竜王が知らせてくれたんでしたね。
渡辺 将棋会館で若手と検討していたんですが、いままで羽生名人はそういう手を逃したことがなかったので、逃した時はおどろきました。その前の深浦王位の手もすばらしかった。しかし、その手よりさらに上の手があった。歴史的な勝負でした。
中原 深浦王位はしぶとい受けのイメージがありますが、思いがけない激しい手を指すこともあります。
渡辺 受けの将棋だけではないですね。
中原 去年の王位奪取は自信になったでしょう。初タイトルを羽生名人から取って、九州にタイトルを持ち帰る夢をかなえたわけですから。

渡辺竜王―雪辱に燃える羽生
■戦績ほぼ互角
 ―両者の相性は?
中原 対戦成績はほぼ互角。羽生名人と一番接近しているのが深浦王位。
渡辺 深浦王位は羽生名人だからと意識しないと言っていました。羽生名人の手だから、と思うと普通の手でも良い手に見える。そういう意識を持たないそうです。
中原 恐れないのは大事なこと。対戦前に名前に負けていては勝てる将棋も勝てません。
 ―どんな展開に?
中原 今期は一手損角換わりが多く見られそう。
渡辺 そこから振り飛車か、居飛車戦法か。
中原 私はまだ一手損に抵抗があります。昔は悪手とされていましたから。昔の常識がくつがえっている。
渡辺 角換わり腰掛け銀も去年の四局目でやりましたから一局くらいは見られそうです。前期、羽生名人はめずらしく相手を引き立たせてしまった。常に羽生名人は自分が主役だったので、今年は借りを返したいはず。
中原 研究熱心な二人ですから最先端の戦形が見られる。
渡辺 深浦王位と羽生名人なら注目される大舞台用に取っておいた手もあるはず。プロから見ても楽しみです。
中原 深浦王位は前半戦でリードしたいところ。ところで七番勝負は二局、しっかり自分の将棋が指せれば、勝つ権利を手にできると私は考えているんです。四番きっちり勝とうとしても相手も強い。羽生名人相手にはそれこそずうずうしいですよ。良い内容の将棋をまず二番、勝つことが大事です。
渡辺 そういう考え方は初めて知りました。
中原 勝敗の予想ですが、第四局の立会人だから、あまり言えないんだけど、深浦王位は準備期間があり、自信もついて四勝三敗で防衛か。今期も一進一退の大接戦でしょう。
渡辺 第一人者の羽生名人は同じ相手に負けたくないはずです。雪辱の思いが強く、四勝二敗か三敗で勝つのでは。四−〇、四−一と一方的にはならないでしょう。