| 血塗られた慈悲、笞打つ帝国。 −江戸から明治へ、刑罰はいかに権力を変えたのか? |
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| (ダニエル・V・ボツマン著/小林朋則訳 インターシフト 3150円) | ||
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時代の現実に即し検討刑罰と監獄の状況はその国の文明度を表すと言われた。だがこの言説は人権論ではない。西洋が東洋諸国を「遅れた国」として植民地化したり、不平等条約を押し付けたりする根拠として使われた。それゆえに、明治政府は、懸命に江戸時代の残虐刑を廃止し、西洋式の監獄を建設した。ここまでは異論がない。 しかし、日本だけが「西洋化に大成功」した理由さがしに、日本の中世は西洋の中世と共通点があり、独自に進歩していたとする進歩史観は正しいのであろうか。そのような見方に立って、人足寄場は、近代的な行刑制度の先走りととらえられがちである。本書は、このような見方を否定する。マクロな史観にとらわれず、刑罰と監獄について、江戸、明治維新、日本の植民地支配時代まで、それぞれの時代の現実に即して丁寧に検討した歴史研究である。 とりわけ江戸時代について、むやみに残虐であったわけではなく、身分制を基礎にし、慈悲と組み合わせた見事なひとつの秩序であったことを指摘して説得力がある。また植民地化の犠牲者と加害者の両面を持つ日本の微妙な状況も描いている。西洋中心主義を完全に排した視点が心地よい。 明治維新の際に多数の翻訳語を作らなければならなかったことが示すように、時代の断絶は深い。現在の常識を持ち込まずに古い時代を見るべきことが強調されている。しかし、大きく変動しているからこそ、日本社会の連続性について考えてみたくなる。武士の台頭以前に350年も死刑が執行されなかったとされる伝統、人足寄場、現在の矯正教育は無関係なのであろうか。他方、99.9%の有罪率である現在の刑事裁判は、江戸時代の無謬(むびゅう)のお上と関連しないのであろうか。末端の役人の間で受け継がれているものと、人員上の断絶なども考察したい。 とにかく、さらに歴史が知りたくなる書物である。資料の説明もわかりやすく読みやすい。 評・河合幹雄(桐蔭横浜大教授・法社会学) |
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