| 限界集落株式会社 | ||
| (黒野伸一著 小学館 1680円) | ||
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村再生へ闘う元銀行員限界集落とは、過疎や高齢化のため、いずれは消えてしまうかもしれない集落のこと。現在日本に2千カ所以上あるらしい。私も子どものころに、父親の転勤で北海道十勝地方の、全校生徒10人ほどの小学校に通ったことがある。この本を読みながら、そのころ感動した自然の美しさや、人間関係の深さを思い起こしつつ、更には現代日本の抱える社会問題も思い知らされた。 主人公の多岐川優は十数年間、都会のエリート銀行マンとして突っ走ってきた生活を、一度リセットするために退職したばかり。息抜きのつもりで、亡き祖父の住んでいた空き家が残る村にやって来た。そこは山間地にある40戸足らずの、いわゆる限界集落だった。構造改革のため郵便局も学校もなくなり、バスさえ廃止され、農業の後継者もいない。村が消滅することに対して諦めきっている村人。見捨てようとする町の役人を見るにつけ、銀行員時代、融資先企業の立て直しをしてきた優の腕がうずく。村民会議の末、全員参加の協業経営へと立ち上がる。そこからは優の腕の見せ所。一気に村が甦(よみがえ)っていく様子は圧巻である。しかしうまく行きかけたときにさまざまな事件が起こってしまう。 その村には、居場所を求め農業研修に来ている若者や、家庭内に事情がある者、前科を持つ者などが肩寄せ合っていた。実は優にも、妻が息子を連れ家を出るという過去がある。皆、傷を負った連中だったのだ。ふりかかる問題に立ち向かううち、いつしかそれぞれの傷も癒やされていく。 生まれ育った土地に対する人間の愛着というものは、想像以上に強いものだろう。それを取り戻すためなら、全身全霊をかけて闘える。ただそこには、疲弊した人びとを愛と機智で導いてくれる強いリーダーが必要なのだ。 今の時代に必要なことと足りないことを教えてくれる、勇気と希望を与えられる一冊だ。 評・神田茜(講談師、作家) |
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