くらし専科


片桐先生の こう見る こう読む


2005/04/17(日)
損得論より老後見据えて 国民年金の第3号被保険者制度
 会社員と公務員の妻で、専業主婦などが加入する第三号被保険者の制度は「得」といわれる。保険料を払わなくても基礎年金がもらえるためだ。働く時間を調整して第三号被保険者の立場を選ぶパート女性も多いが、働き方によっては自分の年金を持つことが老後の生活を安定させるとの見方もある。目先の「損」「得」論だけでなく、老後を見据えてどう選択すべきか。もう一度考えてもいいのではないか。(茶木一範)
■自分で加入も選択肢 負担分だけ増す受給額

 第三号被保険者の制度は専業主婦だけでなく、パートで働く場合も表のように労働時間と年収が条件に合えば制度が適用される。条件以上の働き方をすれば、厚生年金か国民年金に入らなければならない。

 経済的事情などからパートで働く主婦は、保険料負担を避けるため、第三号被保険者のままでいたいという声が多い。第三号被保険者は、「得」とみられる面があるからだ。

 「パートの妻は第三号被保険者を抜けて厚生年金に入ったのに、やめた方がいいと考える夫もいる。しかし、妻がきちんと働きたいと思う場合、目先の損得論にとらわれず、老後を見据えた場合は働き方を優先して年金加入を選ぶのも一つの方法」。社会保険労務士の熊谷たか子さんは、こう考える。

 第三号被保険者だと、夫に家族手当が出る会社もある。妻が厚生年金に入れば、その保険料を負担しなければならないが、夫がリストラに遭った場合に夫を第三号被保険者にできる。それぞれ長所と短所がある。

 熊谷さんは「厚生年金保険料の負担は大変でも、自分の年金を持てば自立した気持ちで働け、将来の受給額も増える。受給年齢に近くなって、厚生年金に入っておけば良かったという人もいる」と話す。

■専業主婦「優遇」 働く女性に広がる不満

 札幌パートユニオン(工藤仁美会長)には、厚生年金の保険料を払うと手取り収入が減ることを心配したり、働く時間を調整して第三号被保険者にとどまりたい女性からの相談が寄せられる。

 正社員と同じ仕事をしても、賃金格差の大きいことも第三号被保険者を選ばせる。働く女性から見れば「制度に合わせるしかないが、保険料を払わない専業主婦が年金をもらえる仕組みはおかしい」(工藤会長)と映る。

 「変ですね」。札幌市内の自営業者の妻は、制度に疑問を感じている。夫と鮮魚店を営む。

 妻個人としての“収入”はなく、夫とともに月額一人一万三千五百八十円の国民年金保険料を払う。四十年加入し、将来の受給額は一人年間約八十万円。専業主婦の受給額と変わらない。

 第三号被保険者は専業主婦を優遇しているといわれるが、専業主婦側は「家事も労働として評価すべきだ」「子育てや介護で働きたくても働けない」という事情がある。

 第三号被保険者の制度は、一九八六年四月から施行された。

 当時は専業主婦世帯が多かったが、九○年代には共働き世帯の方が増えた。そのため、夫婦という世帯単位で設計されている年金を個人単位に切り替えるべきだという指摘もある。

■女性の働き方に影響 社会進出を抑制と批判

 北海学園大の伊藤淑子教授(社会保障論)は「第三号の制度は、女性の社会進出を抑制している。社会の変化に対して制度が変わっていないのが問題」と批判する。

 法人事業所や従業員が五人以上の個人事業所(サービス業などは除く)は、原則として厚生年金に加入する。しかし、企業側は厚生年金保険料の半額を負担する正社員を雇うより、パートを増やす流れだ。

 結果的に「第三号の制度は、女性の働き方を狭めている」という批判につながる。

 内閣府が二○○三年に行った、二十歳以上の五千人を対象にした「公的年金制度に関する世論調査」では、「専業主婦も保険料を負担した方がいい」と答えた人が17・4%いた。

 国は昨年の年金改革で、第三号被保険者となる年収は六十五万円未満、労働時間を正社員の二分の一未満に下げることを検討したが、人件費増になるスーパーや外食産業などの反発を受け、見送られた。熊谷さんは「年金制度は、女性や家族の暮らし方に影響している面もある」という。