くらしの扉

メモ
敬老パス見直し



2004/01/18(日)朝刊
敬老パス 遠くへ… お年寄りの貴重な足だが
 
バスや電車対象 財政難で見直す自治体
 
 高齢者が公共交通機関を利用する際の助成制度が、札幌市など各自治体で見直しが進んでいる。財政難のため、敬老祝い金などと並び、「ばらまき福祉」との批判もある事業を削減する狙いだが、高齢者にとっては貴重な“足”にもなっている。各自治体での見直し議論の状況を見た。(鈴木理恵)
 
敬老パスと敬老手帳を示し路線バスを無料で利用するお年寄り=札幌市内
「助かっている」
 札幌市東区の笠原藤策さん(73)は人工透析を受けるため、中央区の病院へ週三回通う。最寄りの停留所からバスに乗り、地下鉄に乗り換えて病院へ。一カ月の交通費は九千三百六十円かかる計算だ。

 しかし、笠原さんは七十歳以上が市営交通や市内路線バスなどに無料で乗れる敬老優待乗車証(敬老パス)を利用し、運賃はかからない。「透析は続けなければならないので交通費の負担は大きい。敬老パスのおかげで助かっている」と話す。

 財政難の札幌市は敬老パス事業の見直しを打ち出している。同事業を始めた一九七五年の事業費は一億二千八百万円だったが、高齢化に伴い交付者も増え、本年度は当初予算で三十五億二千百万円にも膨れ上がった。今後も年に二億円ずつ増える見通しだ。

 見直しは利用者の一部負担や利用限度額、所得制限の設定などが考えられる。昨年十一−十二月に市民五千人を対象にアンケート調査し、十二月にまとまった単純集計では「見直すべき」という人が七十歳未満で52・9%、七十歳以上でも37・4%いた。同市は一月中に正式な調査結果と一定の検討結果を公表する予定だ。

 同市老人クラブ連合会の山口富美会長は「若い世代に今後のツケがいかないよう、私たち高齢者が制度の在り方を考えなければならない」と見直しに一定の理解を示す。

 一方、市民団体「札幌敬老パスを守る連絡会」の斉藤浩司事務局次長は「納税の段階で応分の負担をしている。財政難というなら、削減すべき事業がほかにある」と現行制度の存続を訴える。
 
半額程度を負担
 札幌と同様の「ふれあいパス」を実施している小樽市は、二○○四年度から利用者に利用額の半額程度の負担をしてもらうことを決めた。

 事業を始めた一九九七年度に総事業費が一億四千四百万円だったのが、二〇○二年度は二億千万円に。同市の人口に六十五歳以上が占める割合はすでに25%を超えており、「見直さなければ制度の維持が困難」(同市高齢社会対策室)としている。

 総事業費の大半は市内で路線バスを運行する北海道中央バスに支払う助成金。しかし、同社は「利用実態と助成金額に大きな乖離(かいり)がある」と○二年、同市に利用実態に見合う金額の支払いを要望した。

 同社によると、パス利用者の延べ乗車回数から算出した推定運賃は約十一億円で、同市からの助成金約二億円と五倍以上の開きがあるという。札幌市からの助成金も利用実績の四分の一程度の四億八千七百万円しかなく、同市にも同様の要望をした。同社の加藤幸嗣運輸部長は「利用実態との乖離は大きな負担で、民間事業者として協力できる範囲を超えている」と訴える。

 ある自治体の職員は「交通事業者の理解と協力が得られなければ、この制度は続けられない。そのためには利用者負担が必要」と打ち明ける。
 
交付年齢上げる
 高齢者が一回百円で路線バスに乗れる「寿バスカード」事業を実施する旭川市でも見直しの議論が進んでいる。同市は昨年十月から十一月にかけ、事業の改正案を市民に示し、意見を求めた。

 改正案は交付年齢を現在の七十歳から七十三歳に引き上げ、新たに対象を非課税世帯の人に限る内容。案通りなら、交付者が現在の約三万九千人から一万五千人に減り、事業費も約三億円から半分以下になる。

 同市介護高齢課は「将来も事業を継続し、行政責任を果たすためには、厳しい反対意見が出ても今の時点で見直ししなければならない」と強調する。一月下旬までに方針を決定する見通しだ。

北海道新聞
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