| 1食2人で400円 |
今月一日から始めた実験がほぼ折り返しを迎えた日、実験の発案者の一人で協議会事務局長の出口憲次さん(28)と志乃さん(26)夫妻の札幌市中央区の自宅を訪ねた。
時刻はちょうど夕食どき。食卓にはスパゲティ・ミートソースのほか、野菜スープとサラダが並んでいた。それなりの夕食に見えたが…。
「めんに八十八円の缶詰のミートソースをかけただけ。本当はひき肉を足したかった。スープの野菜は、安売りで大量に買ったニンジンとタマネギが中心。サラダにもトマトを入れたかったけれど、我慢した」。志乃さんの工夫で、食費は二人分で四百円弱で済んだ。
この実験には二十六組三十四人が参加している。最低賃金で法定労働時間(週四十時間)を働いた場合の収入は十万五千五百六十円。共働きの出口さん夫婦は倍の二十一万千百二十円で夫婦の実際の収入の約45%。そこから賃貸マンションの家賃や携帯電話料、所得税などを引き、三万五千百九十円の資金で実験をスタートさせた=表≪1≫=。
二人はスタート直後、スーパーで米十キロや納豆、キムチなど計七千円分の食料を購入。おかずは少しの量でご飯を多く食べられるものを選んだ。
二十日現在の出費を記した表≪2≫を見てほしい。我慢しきれず、購入したCD一枚と雑誌一冊が数少ないぜいたくで、そのほかは必要最小限。予想外の支出は志乃さんが風邪をひき、通院した医療費二千九百三円と、志乃さんが職場の「慣例」で渡した十四日のバレンタインデーのチョコレート代千七百五十円だけだ。
しかもこの二十日間は志乃さんがほぼ毎日二人分の弁当を作り、自宅でも好物の刺し身や牛肉は一切我慢して節約。もちろん、外食や飲み会、カラオケは厳禁だった。
それでも、残金は五千二百八十八円。出口さんは「また納豆とキムチを買い込めば何とか間に合いそう」と強気だが、志乃さんは「もうこんな実験いや」と悲鳴を上げる。
同協議会は実験終了後、参加者の家計簿と感想文を道労働局に提出し、最低賃金を全国一律千円に上げるよう要望する。引き上げは、実際に最低賃金で働くフリーターやパート労働者らの給与に直結するだけでなく、賃金の相場形成に影響するため、最低賃金を上回る賃金をもらっている正社員にも波及するという。 |
| 出口夫婦の最低賃金生活(単位:円)=表≪1≫ |
| 2人の「収入」 |
最低賃金637×法定労働時間週40時間×2月の日数29日÷7日(1週間)=105,560 |
×2人分 |
211,120 |
| 最低賃金生活スタート前に差し引く支出 |
所得税や年金保険料など(2人分) |
27,554 |
| 家賃(駐車場代込み) |
73,000 |
| 光熱費 |
21,216 |
| 携帯電話料金(2人分) |
12,560 |
| 生命保険(2人分) |
16,000 |
| 自家用車のローン |
25,600 |
| スタート時の金額(2人分) |
35,190 |
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出費内訳(2月20日現在)=表≪2≫ |
| 食費 |
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15,757 |
| し好品 |
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0 |
| 被服費 |
|
0 |
| 娯楽費 |
CDと雑誌 |
3,322 |
| 医療費 |
風邪で通院 |
2,903 |
| 交通費 |
自家用車通勤のガソリン代 |
6,170 |
| 残金 |
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5,288 |
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| 子ども持てない |
出口さんは最低賃金について「仕事で疲れて帰ってきて、趣味さえも楽しめないとなれば、仕事の能率が下がり、企業にとってもマイナス」と指摘した上で「最低限の生活を保証した生活保護扶助費より低額なのはおかしい」と話す。
札幌市の生活保護扶助費は、収入ゼロの夫婦二人世帯(三十歳代)で月額十二万二千五百円。これに住宅扶助費四万五千円が加算され、十六万七千五百円の給付がある。出口さん夫妻はたまたま共働きだから、これを上回るが、一人しか働いていなければ、扶助費の方が高くなる。
出口さんがもう一つ痛感したのは、最低賃金では子どもを持つのが難しいということだ。「マンションを引っ越し、車を手放し、生命保険を解約するしかない。このままでは少子化に拍車がかかる」と話している。 |