くらしの扉
メモ
生活保護制度の実態




2004/10/03(日)朝刊
道内の受給者数 昨年度過去最高  揺れる生活保護制度
 
高齢者 年金だけで暮らせず
不況 働きたくても職なし
 負担減へ抜本的見直し
 
 「年金だけで暮らせない」「仕事がない」−。道内では生活保護を受けている人の数が昨年度、十八年ぶりに過去最高を更新した。全国的にみても受給者は八年連続して増加。長年納めたのに、自立できる年金をもらえないという年金制度の矛盾も背景にある。社会保障の最後の砦(とりで)を担う現場の苦悩は深い。(上村英生)
 
「何もかも節約」
 上川管内の無職男性(65)は十月から国民年金の支給を受ける。「額は月に六万円余りと聞くが、これで本当に生活できるんだろうか。生活保護世帯と同じか、それより低い」と怒る。企業の委託契約社員だったため、国民年金を三十五年間かけてきた。

 公営住宅の申し込みも当たらず、職安に足を運んでいるが、年齢が壁になり不採用。若いころの工場勤めの時に厚生年金を八年半かけていたため、年金は計約九万円になるが、家賃の三万八千円を払った残りで生活する。「何もかも節約です」と嘆く。

 生活保護は国の基準による最低生活費を保障する制度のため、年金など収入があれば、その分を差し引かれる。この男性の地域では、六十五歳一人暮らしで健康な人なら夏場は月六万千六百四十円が最低生活費。これに家賃が二万四千円を上限に実費相当加算される。収入や扶養義務者からの援助が基準を上回れば、保護を受けることはできない。
 
病状から「就労可能」とされ、生活保護申請が却下された通知書。
申請時の手持ち金は1万円だったという
 
全国平均の2倍
 道内では被保護者数が昨年度平均で、十二万四千五百九十七人と、これまでのピークの一九八五年度を上回った。また、保護世帯数も八万千七百二十八世帯で過去最高。人口千人当たりの被保護者数を示す保護率も北海道は二一・九で、全国平均の二倍だ。

 保護世帯の類型では、高齢者(女性六十歳以上、男性六十五歳以上)世帯が増えている。「本来なら長年、年金を払った方が生活保護以上の暮らしをできるはず。だが、サラリーマンで厚生年金がない人は、子供の扶養を受けるか、収入がないとギリギリ」(岡田寿・札幌市保護指導課長)。国民年金を四十年間納めた老齢基礎年金の満額で月六万六千二百八円という安さが背景にある。

 保護開始理由では「就労収入の減少・喪失」「不就労収入などの減少・喪失」といった経済的理由が増えている。

 「まずは就労の場が必要だが、体を壊して仕事を離れたり、病気を持って無理できない人が多い」(池田俊博・道保護課主幹)という。昨年度は道内の被保護者の87%が何らかの医療扶助を受けた。全国的にも医療扶助を受けた入院者の45%が精神や行動の障害で長期間にわたりがち。社会復帰の施設が充実し、社会的入院が解消されないと、保護費は減らない。
会社員の厚生年金保険料の推移
 
厳しく資産調査
 また、保護申請すると、福祉事務所から資産調査が金融機関や生命保険など二、三十社ぐらいに行く。「短期間保護すれば何とか自立できる人でも、資産調査で認められないケースが多い」という問題もある。

 全国の保護受給者はこの八年間で一・五倍となり、本年度予算も前年度比15%増のハイペース。厚生労働省は昨夏から、生活保護制度の抜本的な見直しに入っている。国の負担割合四分の三を三分の二に減らすことを本年度いっぱいかけて検討中だ。負担が増える地方側は「裁量の余地がなく法律上も国の責務。交付税で措置するといっても、交付税全体が減っている」と反対している。

 同省は本年度から老齢加算の段階的廃止に踏み切った。さらに、受給者の多様な問題に対応した「自立支援プログラム」を作り、被保護者の取り組み状況を定期的に評価する制度を来秋から導入する方針を九月下旬に開いた社会保障制度審議会の専門委員会で示した。取り組みが不十分な場合は保護費の減額や支給停止も考慮する内容に、委員から「生活保護には国民の権利の部分もある」と懸念の声が出た。同省は「自立支援に中心があり、ペナルティーのように言われて困った」と話す。

 現場からは「生活保護はほかの制度からこぼれ落ちた人の受け皿。締め付けても問題は解決しない」(札幌市)と、社会保障全体の充実を望む声が出ている。

北海道新聞
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