くらしの扉
メモ
希望者全員雇用は少数派




2004/10/17(日)朝刊
65歳までの雇用が義務化 勤労者に朗報 企業は懸念
 
「年金に頼れず助かる」
「コスト増につながる」 新規採用との両立も課題に
 
 改正高齢者雇用安定法が六月に成立し、六十五歳までの雇用確保が企業に義務付けられた。段階的に引き上げられている厚生年金の支給開始年齢までの空白期間を解消するための措置で、老後の生活に不安を持つサラリーマンには朗報だ。だが、人件費などのコスト増に頭を悩ます企業も多く、賃金水準の引き下げや新規採用の抑制を懸念する声も出ている。(古川有子)
 
継続雇用制度を導入した秀岳荘の店内で接客する従業員。
60歳で定年となった後も65歳まで働ける
 
低い認知度
 今月初め、道労働局などが稚内市内のホテルで開いた「高齢者の雇用を考える集い」。宗谷、留萌管内の約五十社の総務担当者らが出席した。担当職員らが同法の改正について説明し、六十五歳までの雇用確保を求めた。

 しかし、同法が改正されたのは、年金改革関連法案の審議が行われた「年金国会」。年金改革の議論に隠れ、改正を知らない経営者も多い。出席した食品製造会社の総務担当者は「義務化なんて初めて聞いた」と驚く。道雇用促進協会の斉藤哲也・高年齢者雇用アドバイザーは「引き上げ開始まで二年もないと知って、ぎょっとする経営者も多い」と明かす。

 高齢者雇用安定法ではそれまで、会社員の定年を六十歳以上とし、希望者は六十五歳まで雇用することを努力義務としていた。

 今回の改正では、雇用を延長する年齢を二○○六年度から段階的に引き上げて、最終的に一三年度以降は六十五歳までの雇用が義務付けられる=図=。
会社員の厚生年金保険料の推移
 
特例措置も
 雇用延長の方法は、《1》定年の引き上げ《2》六十歳以降の継続雇用制度の導入《3》定年制の廃止−の三つがある。《2》は六十歳以上の希望者全員を雇用することが原則だが、労使合意のもとで健康診断の結果やキャリアなど、対象者の基準を作ることは認められている。

 労使協定が結べない場合、従業員三百人以上の大企業は三年間、三百人未満の中小企業は五年間、就業規則の変更で対象者の基準を定められる特例もある。

 道中小企業家同友会は昨年、札幌支部の会員企業千八百四十三社を対象に雇用実態調査を行った。アンケートに回答した四百五十五社のうち、88・9%が定年延長について「当面引き上げの予定なし」と答えた。「六十五歳まで継続雇用するうえでの障害」として、49・4%が「体力、能力の個人差」を挙げ、「人件費の負担増」(25・3%)、「働く場の確保」(20・2%)が続いた。

 西谷博明経営・政策局長は「制度として希望者全員を継続雇用するとなると、コスト増は免れない。不況下で単価をぎりぎりまで下げている企業にとって、存続にかかわる問題でもある」と指摘する。

 道央圏の会社経営者は「小さな会社にとって、コスト増は死活問題。年金制度のしわ寄せを企業に押し付けているようなものだ」と不満を隠さない。

 しかし、一九四七−四九年生まれの「団塊の世代」が二○○七年から定年を迎え始め、一○年の六十歳−六十四歳の労働力人口は、○五年より百四十万人増の六百二十万人に上る。企業の早急な対応が迫られている。
 
先取り導入
 一方、すでに雇用延長を決めた企業もある。設備施工の恒完工業(札幌市、荒木洋社長)は二月、六十歳で定年した後も、希望者は同一の労働条件で六十五歳まで働ける制度を導入した。

 「ベテラン従業員は経験と人脈があり、客の気持ちもわかっている。作業強度の低いメンテナンス業務を担当してもらおうと思う」と荒木社長。

 アウトドア用品販売の秀岳荘(同、金井哲夫社長)は二○○○年、定年後の継続雇用制度を導入した。定年後も同社の縫製工場で働き続けている本間トク子さん(64)は「年金だけでは経済的に足りないので助かる」。金井社長は「年金の支給が始まるまで、従業員が安心して働けないかと考えた」という。

 課題も残る。「雇用の延長と新規採用をどう両立させるか。これが、一番頭の痛い問題だ。退職金など給与体系の見直しも必要だろう」(荒木社長)という声が多い。

北海道新聞
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