小学生のみんなに「お父さんに直してほしいこと」を聞くと「家族の前で大きなおならをすること」という答えがよくあります。おならって、どんな人もみんなし ているけれど、正体は何だか知っていますか? そこで、今回はおならについて探(さぐ)ってみました。
  《五十嵐文弥(いがらしふみや)》


 旭川(あさひかわ)市にあるくにもと病院の国本正雄院長(くもとまさおいんちょう)によると、おならには二種類(しゅるい)あるんだって。
 ひとつは、口から飲みこんだ空気が、胃(い)や腸(ちょう)を通ってこう門から出るもの。ごはんを食べたりお茶を飲んだりするときに、いっしょに入りこんだ 空気が出たものだから、あまりくさくない。一部はげっぷになって口から出て行くんだ。

国本正雄院長

 もうひとつは、大腸で腸内細きんが食べ物の残(のこ)りかすを分解(ぶんかい)するときに出るガス。これがくさいおならだ。においの原因(げんいん)は、腸 内細きんがタンパク質(しつ)を分解するときに出るガス。だから豆や肉類など、タンパク質を多くふくむ食物を食べた時のおならは、くさいことが多いんだね。

 人によってもちがうけれど、くさくないのと、くさいのの割合(わりあい)は七対三くらいだって。

 おならの成分(せいぶん)は約四百種類。ちっ素(そ)がもっとも多く二〇%以上、そのほかメタン、水素、酸素(さんそ)、二酸化炭素(にさんかたんそ)がお もな成分なんだ。においのもとになるのはりゅう化水素やインドールといった物質で、いずれも一%以下の割合といわれます。

 人が一日にするおならの量(りょう)は四〇〇−二〇〇〇ccで、個人差(こじんさ)が非常(ひじょう)に大きいんだ。一回に出る量は平均(へいきん)一〇〇 ccで、みんなが給食(きゅうしょく)の時に飲んでいるパック牛乳(ぎゅうにゅう)の半分くらいの量だね。

 ところで「音のしないおならはくさい」って言うけれど本当かな。これも先生に聞いてみました。

 おならの音は、気体がせまいこう門を通る時に、こう門がふるえて出るんだ。音のしないおならは、大きな音のおならに比べて、一回の気体の量が少ない。ガスの 割合が高く、くさいことが多いそうです。

 おならはがまんすると、大腸のねんまくから血液(けつえき)中に吸収(きゅうしゅう)され、肺から息となって出ていってしまうんだ。一部はおしっこにとけこんで出されるんだって。

 もう腸や胃腸などの手術(しゅじゅつ)の後は、おならが出ると、腸が正しく働いていることが分かるので、お医者さんや看護婦(かんごふ)さんが「ガスは出ま したか」って聞くんだ。

 国本先生は「『おならがよく出てはずかしい。止めてほしい』と病院に来る小中学生もいます。でも、おならは人間が生きていれば出るのが自然(しぜん)。人前 ではしなくても、みんなどこかで必(かなら)ずしているんだよ。あまり気にしなくてもだいじょうぶです」と話してくれました。






 志の輔さんに聞きました
 昔から落語のネタ     
 
   
 おならは、文学や芸能(げいのう)の世界でも題材(だいざい)になっているんだよ。古典(こてん)落語には「転失気(てんしき=おならのこと)」という題の 作品があります。テレビでおなじみの落語家、立川志(たてかわし)の輔(すけ)さんは、そのストーリーをこう話してくれました。

 ある日医者に病気をみてもらったおしょうさんが、治(なお)ったあかしに「転失気はありますか」と聞かれ、意味が分からないので「ありません」と答えてしま う。

 おしょうさんは寺にもどって小ぼうずの珍念(ちんねん)に、てんしきを近所で借(か)りてくるよう言いつけますが、近所の人も意味が分からない。「たなから 落として割(わ)ってしまった」とか「おつけ(みそしる)の実にして食べてしまった」と、でたらめを言う。そこで珍念は、医者のところへ行き、正直にたずね た。

 分かった珍念は、おしょうさんをだまそうと、てんしきは酒を飲むさかずき(呑酒器=てんしゅき)だと答える。

 医者がやって来たのでおしょうさんは「先生、てんしきがありました。ごらんにいれましょう」と話しかけるが、お医者さんは「あればそれでいい。あんなもの、 見るにはおよばない」。

 おしょうさん、おくから三つ重ねのさかずきを持参(じさん)して「これがこの寺の呑酒器です」と自まんする。医者はおどろき「医学ではおならのことを転失気 と言いますが、お寺でさかずきをてんしきというのはどういうわけですか」と聞く。

 おしょうさんが、あわてて「どちらもやりすぎるとブーブーいいますからな」というのがおちです。お酒も飲み過(す)ぎると周囲(しゅうい)が文句(もんく) を言う、ということでしょうか。

 この話全体には、知らないのに知ったかぶりするとはじをかく、という意味もこめられています。

 江戸(えど)時代には、落語だけじゃなく、小話やせんりゅうにも、おならを題材にしたものが多くあります。生理現象(げんしょう)はだれしも経験(けいけ ん)のあること。そういったものを取り上げて、おもしろがる時代だったのでしょう。



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