みんな、肉は好(す)きだよね。でも、ふだん食べている肉はニワトリ、ブタ、牛、ヒツジくらいかな。今、北海道でダチョウの飼育(しいく)が行われています。肉、皮、羽根、卵(たまご)も利用(りよう)できて、ダチョウはいいことばかり。みんなもたくさん食べられるように広まるか、お話をうかがいました。《編集委員(へんしゅういいん) 中尾吉清(なかおよしきよ)》

東藻琴の会社訪問

肉、卵、皮など利用/少ないえさで育つ

メスのダチョウ2羽にえさをやる小久保(こくぼ)さん。とてもおとなしく、近くによってもこわくありません
 ダチョウと聞くとアフリカの草原を連想(れんそう)するね。この野生種(しゅ)から肉がたくさん取れ、おとなしく飼(か)いやすいなど家畜(かちく)として改良(かいりょう)が行われてきました。家畜のダチョウのオスの体重は一二○キロ、高さは二・一メートル。メスは一○○キロ、二メートル。野生種より小さめです。

 北海道で飼育が始まったのは網走管内東藻琴(あばしりかんないひがしもこと)村です。村内の農家、菓子(かし)店、旅館などの経営者(けいえいしゃ)ら二十六人が一九九七年に「オーステックジャパン」という会社をつくって取り組んでいます。

 乳牛(にゅうぎゅう)とダチョウを飼育している社長の小久保謙(こくぼけん)さんにうかがいました。「ダチョウはとても経済的(けいざいてき)な家畜だよ」。小久保さんはそう説明(せつめい)してくれました。

 えさは草が八割(わり)、穀物(こくもつ)(トウモロコシ、ダイズなど)が二割と、草が中心です。牛だと肉一キロを生産(せいさん)するのに、えさは五キロ必要(ひつよう)です。ところが、ダチョウはえさ二キロで肉を一キロ生産できます。

大きなダチョウの卵(たまご)。42日で、ひながからをやぶってふ化します
 このひみつは、ダチョウのすぐれた消化能力(しょうかのうりょく)です。ふつうの鳥は空を飛(と)ぶために消化管(かん)が短いのです。一方、大きなダチョウは地上で草を食べる方向に進化したので、長い腸(ちょう)を持ちました。だから、えさを時間をかけて完全(かんぜん)に消化できるんだって。ふんもあんまりくさくないよ。

 メスは一年間に卵を四十個くらい産(う)みます。ひなは、およそ一年間で一○○キロ近くに育ち、肉が三十五キロくらいとれます。だから一羽のメスが一年間に産んだ子どもから、四十(羽)×三十五キロで、千四百キロもの肉を生産できます。しかもダチョウは長生きで十−十五年間、卵を産み続(つづ)けます。

 牛は一頭しか子が生まれないし、およそ三十カ月育てて得られる肉は二百七十キロくらい。肉の生産にはダチョウの方がむいていることが分かるね。ブタも子だくさんで、牛より早く育ちますが、草だけでは飼えません。

 地球上では食料の生産を上回る勢(いきお)いで、人口が増(ふ)えています。穀物は人間も食べるものだから、それを家畜のえさにすると、食べ物がなくなる人々が出てくるよね。

 「貧(まず)しい国、中国のように人口の多い国でも、みんなが肉を食べたいならば、ダチョウの飼育が適(てき)しているんだよ」と小久保さんは言います。

 ダチョウ皮のハンドバッグはとても高価(こうか)です。みんなのお母さんもほしがるんじゃないかな。羽根は女性(じょせい)のショール(肩かけ)など主にファッションに用いられます。

食べてみると…

低カロリー、やわらかく牛肉のよう

サイコロステーキ(右)、タタキ(左)と奥(おく)がチーズをはさんだカツ
 オーステックジャパンは、ダチョウの焼(や)き肉、ハム、ハンバーグ、コロッケなどをインターネットで販売(はんばい)していて、村の市街地(しがいち)にある事務所(じむしょ)でも買うことができます。

 となりの旅館で名物のダチョウ料理(りょうり)を作ってもらったよ。まず、軽くあぶってうす切りしたタタキとサイコロステーキ。肉をそのまま味わえる料理です。三品目は、チーズをはさんであげたカツ。チーズと肉のやわらかさがとけ合って、これも最高(さいこう)!

 ニワトリに似(に)た味を想像(そうぞう)していたのですが、赤身の牛肉に似た感じ。でも、牛肉だと、あぶら身が気になったり、逆(ぎゃく)にあぶらが少なくて、かたくぱさぱさしていると思うことはないかな?

 ダチョウ肉はやわらかく、もちもちして、おいしいなあ。カロリーが低(ひく)く、あぶらも少なくて、体にいいんです。ダチョウの肉と出合って、食の世界、食べる喜(よろこ)びが広がったよ。

 この旅館は、食堂(しょくどう)も経営していて、ダチョウラーメンが人気です。村内の菓子店では、ダチョウの卵を使ってふんわり仕上げたどら焼きが大評判(ひょうばん)なんだって。でも、取材に行った日は、残念(ざんねん)、売り切れだったよ。

 このように、ダチョウは東藻琴(ひがしもこと)村に行く楽しみを高めてくれて、「地域おこし」にとても役立っています。知床(しれとこ)、阿寒(あかん)など近くの観光地(かんこうち)でもダチョウ料理を出すホテルがあるそうです。

 でも、小久保(こくぼ)さんは「地域(ちいき)の特産品(とくさんひん)でとどまっていてはだめ」と、高い目標(もくひょう)をかかげています。

 各地で飼育が盛(さか)んになり「食べ物」として関心を持ってもらうこと、多くのレストラン、食堂などでダチョウ料理が出され、食べ方が広まることが家庭の食卓(たく)にも上るカギだそうです。

 世界ではアフリカ大陸(たいりく)を中心に六十万羽近くが飼(か)われていますが、日本ではやっと一万羽をこえたところ。北海道は茨城(いばらき)県に次ぐ産地で千三百羽近くが飼われていますが、みんなの口に入るにはまだまだ。

 小久保さんらは「日本オーストリッチ事業協同(きょうどう)組合」という組織(そしき)をつくり、飼い方から加工(かこう)、販売を支(ささ)えて増産(ぞうさん)を目指しています。


戻 る
北海道新聞 Copyright(c) The Hokkaido Shimbun Press.