私は子どものころの思い出を絵本にしました。住んでいたのは、美唄市共練というまちです。森があって、畑があって、川が流れ、山がある。その向こうに空と雲が見える。近くには炭鉱もありました。四十年も前のことですが、よーくおぼえているんです。
私の家はトマト、キュウリ、リンゴなどを作る農家でした。赤い屋根と大きなイチョウの木が目じるしで、畑の中の一軒家でした。春、水が温かくなる五月になると、近くで、カッコウが鳴くんです。姿は見えない。どこから来るのか分からない。でも、「カッコウ」という鳴き声を聞くと「春なんだなぁ」と思ったものです。父は「もう、寒くはならないな」と言って、畑のたねまきの合図にもしていました。
通学路のと中にてい鉄屋さんがあって、春になると、農耕馬のてい鉄を、つめがある冬用から取りかえるんです。てい鉄を熱くしてひづめの形に合わせる。そして、じっとしている馬のあしをひょいとあげて新しいのを打ち付けていく様子がおもしろくて、かっこよかった。友だちとのぞきこむように、いつまでも見ていました。
私の家にも、鼻すじに白いもようがある馬が一頭いて、アオバと呼んでいました。春は、畑を起こすのに使っていました。プラウがギラリと光り、黒土をはじいていく。力持ちの馬でした。冬、雪が積もると、父が作ったすきをつけて、雪に道をつけてくれました。
家に帰って馬小屋をのぞくと、いない。そんなときは、近くの美唄川のほとりに行くと、川の中でのんびり水を飲んでいたりしました。
えさをやったり世話をしたんですが、中学生になったある日、いなくなった。農作業が、動物の力から機械に変わっていく時代でした。どうなったのだろう、ひょっとしたら…。父に聞けませんでした。四十年近くたったいまも、こわくて聞けないんですよ。 |