犬には人と暮らした一万年もの歴史があるそうです。中学時代、札幌で北海道犬に出合ったことで北海道犬と、いっしょに生きてきた人たちに興味を持つようになりました。犬が自分で歩いてきたのではなく、人と行動する動物だからです。私の人生に大きなえいきょうをあたえた札幌での生活はしゅ味で北海道犬を研究するスタート台だったのです。
父の転勤で札幌に来たのは中学一年のとき。父は自治省という地方行政を担当するところから道の職員になってきました。家族は札幌市中央区の、いまの知事公館のところで一九六三年まで暮らしました。
札幌に来て間もなく一ぴきの犬が家族の一員になりました。胆振管内厚真町の伊智狼という北海道犬です。しかし、間もなく死んでしまいました。みな、さびしがっていたところへ今度は札幌・定山渓で生まれた同じ種類の子犬が家族に加わったのです。これにも伊智狼と名付け、みんなでかわいがりました。
札幌の人口がいまの三分の一の六十万人ほどだった時代。伊智狼は一度だけニワトリをつかまえてきて、家族におこられたことがあります。ペットとして飼うには狩猟本能が強すぎたところもありました。首や足は太めで、首から胸にかけて盛り上がっている北海道犬の特ちょうそのままでした。犬の展覧会では、いつも一位の好成績をおさめました。猟友会の人から猟犬に仕こみたい、とたのまれたこともありました。
その後、私たちは東京に移り、伊智狼や、その子どもが死ぬまで一緒に暮らしました。ところが、十年ほど前、沖縄の友人が、琉球犬保存の会を新しくつくる時の講演会で、岐阜大学の先生が発表した、おもしろい研究資料を送ってくれたのです。
琉球犬と北海道犬が、本州をはさんで両はしなのに、遺伝学的につながりが深いというのです。確かに琉球犬は耳が立ち、尾が丸く円をえがき、しっかりした足で立つ北海道犬そっくり。私はますます興味をかきたてられました。 |