首相公邸は、一言でいうと首相の「わが家」。旧公邸は、旧官邸に隣接して同じ年に造られたが、老朽化が著しいため二○○二年に取り壊された。
旧公邸完成以降の歴代首相は小泉純一郎首相を含め四十二人。このうち、旧公邸で暮らしたのは十八人にすぎない。「二・二六事件」を機に入居を辞退する首相が相次ぎ、主不在の時代が続いたためだ。公邸の代替施設として敷地内に木造二階建ての住宅が建てられたが、これも第二次世界大戦中に東京大空襲で焼失した。戦後、旧公邸の改修を行い、六八年、佐藤栄作元首相が入居。以来、十一人が暮らした。
旧公邸も、瀟洒(しょうしゃ)な建物だったが住み心地はいまひとつだったようだ。佐藤元首相の寛子夫人は、著書で公邸のゴキブリに悩まされたと紹介。体長四、五センチのゴキブリを見て、佐藤元首相が「あれはいやじゃのう」とぼやいたという話を披露している。
細川護煕元首相の佳代子夫人は、雑誌の取材に「公邸を初めて下見したときはショックでした」と回想。どの部屋も薄暗い、家族五人が集まれる居間がない、台所のガス台は六十五年前のものだった−と振り返っている。羽田孜元首相の綏子夫人は新聞社の取材に「霊が見えるという人がいて、おはらいをしていただいた。庭に軍服を着た人たちがたくさんいるというんです」という話を紹介している。 |