もっと知りたい

もっと知りたい
メニューに戻る
構造改革特区


 小泉純一郎首相が進める構造改革の目玉の一つとして、「構造改革特区」が誕生してから二年半近く。これまでに全国で五百四十八件、道内で三十四件の特区が認定され、具体的な成果も出始めている。そもそも道内にはどんな特区があり、どんな現状にあるのか。そして、その課題は何か。


道内認定34件は 教育、福祉分野目立つ

 三十四件という北海道の構造改革特区認定件数は、長野県の三十九件に次ぎ、都道府県の中で二番目に多い。

 申請主体となる市町村の数が多いことも大きな要因だが、道は「面積が広く、人口密度が低いなどの特殊性もあり、全国一律の規制に違和感を持つ場面が多いためでは」(企画振興部)と分析する。

 分野別に見ると、幼稚園と保育所の連携を目指す「幼保一体化推進関連」が最多で九件。「生活福祉関連」八件、「教育関連」五件、「都市農村交流関連」三件などがこれに続く。

 経済活性化に直接結び付くような分野よりも、暮らしやすい地域づくりを目指した特区が多いのが特徴だ。

 ただ市町村数で見れば、特区を申請し認められたのは道内二百七のうち三十市町村にすぎない。

 札幌市の五件(規制緩和の全国展開に伴って認定が取り消しになった一件を含む)、小樽市の三件、十勝管内清水町の二件など、複数の特区申請が認められた熱心な自治体がある一方で、制度そのものに関心が薄い自治体も多く、二極化が進んでいると言えそうだ。

道内の主な構造改革特区
申請主体 特区の名称 内  容
稚内市 国際交流特区 ロシア・サハリン州との貿易促進を狙い、通関業務の時間外手数料を半額化。さらに数次短期滞在査証(マルチビザ)発給手続きを簡素化
十勝管内清水町 文化のまちの心の教育特区 町独自の教員採用により、清水小学校の低学年の少人数学級を実現
文化と人が響き合う清水町教育特区 東京資本の株式会社が廃校になった旧小学校校舎を活用し、通信制の単位制高校「北海道芸術高校」(仮称)を来年4月をめどに開設する
三笠市 岡山・萱野小中一貫教育特区 道内初の小中一貫教育を導入。国際科を設け、小学1年から英語を学ぶ「国際科」を設けるなどユニークな教育を実践
桧山管内瀬棚町 有機酪農と有機農業の推進特区 農地リース方式による株式会社の農業経営への参入容認。居酒屋チェーンのワタミフードサービス(東京)が町内で有機農業を展開
上川管内東川町 北海道東川町幼保一元化特区 町立幼稚園と町立保育園を、新設した幼児センターに移し、幼保の区別をせず、公平に幼児教育をする「混合保育」を実施
桧山管内乙部町 公設民営高齢者福祉特区 介護サービスの向上を狙い、町立特別養護老人ホーム「おとべ荘」の経営に、全国で初めて民間企業が参入

成果は 農家民宿で濁り酒 消防設備の免除も

 特区導入の成果を実感している地域も多い。

 空知管内長沼町の「グリーン・ツーリズム特区」は昨年三月、農家が農業体験でやってくる都会の人に寝泊まりしてもらう際、宿泊施設に必要な消防設備の一部免除が認められた。

 それまでは消防法で、農家民宿であっても、避難誘導灯や通報設備の設置が義務付けられていた。

 さらに同町は今年七月、道内で初めて、受け入れ農家のどぶろく(濁り酒)製造免許取得を容易にする追加認定を受け、宿泊者に自家製どぶろくを提供できる仕組みが整った。

 同町では現在、民宿許可を受けた農家は六十軒近くに増え、五月には静岡県の中学校の修学旅行生約百五十人を受け入れた。来年は修学旅行生の受け入れが千人規模に増える見込みという。

 消防設備に関する規制緩和は今年四月に全国展開され、独自性は薄まったが、町は「特区実現で知名度と信頼度が高まった」(農政課)と地域振興への貢献を強調する。

 国や道から与えられた制度を利用するのではなく、独自のアイデアを持って国と直接交渉することで、職員の政策立案能力が高まるという効果を指摘する声もある。

課題は なお厚い規制の壁 権限移譲こそ必要

 一方、これだけ特区が増えても、省庁が守り続ける規制の壁は依然、厚い。過去に内閣府が募集した特区提案の結果をみると、省庁の強い抵抗で、回を追うごとに採用されない件数が増え続けていることが分かる。

 二十一世紀政策研究所(東京)の集計によると、二○○二年の第一次提案では、約三割が特区か全国での規制緩和措置が認められたのに対し、○四年の第五次提案の適用件数は一割弱まで低下した。

 道内からの提案も、第一次には六十四件もあったが、こうした不採用続きが影響してか、今年六月の第七次提案は十二件まで減ってしまった。道内のある自治体幹部は「省庁の地方に対する許認可意識は全く変わっていない。期待するだけ無駄だ」と失望感を漏らす。

 また、特区を認められても部分的な規制緩和にとどまり、使い勝手が良くない事例も少なくない。複数省庁にまたがる大胆な規制緩和が減り、似たような特区が増えるなど、全体に小粒化しているとの指摘もある。

 単なる規制緩和だけではなく、もう一歩踏み込んだ権限移譲や財政措置への拡大を求める声も強い。意欲ある地域が報われる制度としてさらに成熟させられるかどうかが、今後のカギとなりそうだ。

メ モ

 構造改革特区は、中央省庁や業界団体の抵抗が強い規制緩和を、市町村やその一部というように地域を限定して実験的に導入し、経済の活性化を目指す制度だ。小泉内閣が構造改革の「切り札」として打ち出し、二○○三年四月から始まった。

 特区実現までの流れは、まず、政府の構造改革特区推進室が年二回程度、自治体や企業、個人から「こんな特区をつくりたい」という提案を募る。

 提案を受けた同推進室は、その規制を担当する省庁と折衝。規制を緩和する特例措置が認められれば、関係自治体があらためて特区計画を申請して、認定を受ける−という手順となっている。