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預金者保護法


 偽造・盗難キャッシュカードを使った現金自動預払機(ATM)での預金引き出し被害の補償を、金融機関に義務付ける預金者保護法が三日、成立した。来年二月に施行される。被害を受けた預金者に過失がなければ金融機関が原則として被害を全額補償し、金融機関側には預金者に落ち度があったかを立証する責任も課している。盗難通帳やインターネット取引での被害が対象外となるなど課題も残るが、被害者救済には大きな前進といえる。


カード被害 過失なければ全額補償

 偽造・盗難カードによる不正な引き出しについて、これまで金融機関は民法に基づく約款(契約上の自主ルール)などを盾に、ほとんど補償に応じず、金融庁も法制化には消極的だった。しかし、被害の急増が社会問題化する中、与野党がそれぞれ議員立法の形で法案を提出、最終的に与党案が通った。

 預金者保護法の対象となるのは、銀行や信用金庫、信用組合、農協、漁協、郵便局、労働金庫など、ほぼすべての金融機関の預金(農協、漁協、郵便局は貯金)。被害に遭った預金者は警察と金融機関への被害届け出が必要で、原則として届け出から三十日前までのATMでの引き出し被害が補償対象となる。

 同法では、偽造・盗難にかかわらず、預金者に過失がなければ、金融機関が被害の全額を補償するのが基本。ただ、預金者に「重過失」があった場合には補償はされない。重過失以外の過失では、偽造カードによる被害は全額補償、盗難カードは75%補償と定めた。カード偽造に対しては金融機関に一種の製造者責任を求める一方、盗難では預金者の過失度合いを重視した。預金者の過失については、金融機関側に立証責任を負わせた。

重過失 注意義務違反に限定 線引きの基準難しく

 補償されない重過失は、同法の付帯決議の中で例示。《1》他人に暗証番号を知らせた《2》暗証番号をカードに書いた《3》カードを安易に第三者に渡した−などの注意義務違反に限定した。

 一方、重過失以外の過失については、国会の審議の中でいくつかのケースが論議された。ポイントとなるのは暗証番号の管理だ。

 生年月日や自宅・勤務先の電話番号など類推されやすい番号をカードの暗証番号に使っただけでは過失とみなさず、《1》カードと暗証番号のメモ、あるいは生年月日、電話番号を記した書類を一緒に保管して盗まれた《2》金融機関から何度も暗証番号の変更を促されながら応じてこなかった《3》カードを施錠のない場所などに保管していた−のうち複数項目に該当した場合に、総合的に判断することで一致した。

 だが、これら以外のケースの例示はなく、各金融機関に、より踏み込んだ基準づくりを求めることになった。

 全国銀行協会は九月中にも業界全体の共通ルールとなる約款のひな型を作成し、具体的ケースをまとめる。補償しないケースを例示するとそれ以外は補償対象となってしまうなど「難しい作業」(大手行)となるが、与党関係者の間には「金融機関が事実関係を証明するのは難しく、実際にはほぼすべてが補償対象になるのでは」との見方もある。

課題 盗難通帳は対象外に 2年後に見直すが…

 また、盗難通帳に関しては「窓口の本人認証は印鑑で行われており、印鑑の有効性を論議すれば、印鑑重視の日本の商取引に影響を与えかねない」(与党関係者)と対象から外され、付帯決議に「防止策や預金者保護のあり方を検討する」と盛りこむにとどまった。インターネットバンキングの利用者から暗証番号を不正に盗み取る「フィッシング」などの被害も多発しているが、ネット関連被害の法整備も間に合わなかった。

 預金者保護法は施行から二年後に見直すことになっている。ただ、金融機関は被害補償の対象の拡大には消極的で、手のひらの静脈などで本人を確認する生体認証の導入など、安全対策の強化に力を入れる構えだ。

メ モ

 警察庁によると、2004年の偽造・盗難キャッシュカードによる現金自動預払機(ATM)からの不正引き出しは、全国で3448件、金額で24億249万円に上っている。

 全国銀行協会は偽造キャッシュカードについてだけ調査しているが、03年度に会員181行で100件、2億9000万円だった被害が、04年度には411件、9億6800万円と大幅に増えた。盗難通帳による被害も、同協会の調べで04年度は674件19億5800万円に上っている。