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原油高


 八月末、ニューヨーク市場の原油先物価格が一時一バレル=七十ドルを突破し、その後も歴史的な高値で推移している。米国、中国、インドで需要が増加しているのに産油国の生産が出遅れ気味なためだが、原油値上がりは灯油など道民生活に欠かせない製品の値上がりにつながるほか、回復基調をたどる日本経済全体にも暗い影を落とす。騰勢の衰えない原油高の現状と背景をまとめた。


なぜ高騰 新興経済国の需要拡大

 原油高を示す事実上の指標となっているのは米ニューヨークのマーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場。標準油種は米国産ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)。先物相場は思惑含みの値段で、現物価格と同じではないが、WTI先物は輸入品を含む北米の原油全体の値動きを反映している。米国南部が大型ハリケーンに襲われた八月末に一時一バレル=七十ドル台を付けた。アジア地域では中東ドバイ産原油が指標となっている。

 先物価格は短期運用で利ざやを狙う投機的なヘッジファンドの思惑に左右される側面があり、「一バレル=七十ドルといっても、実態より二十ドル前後高い」(業界関係者)のが常識だ。しかし最近の高騰の背景には、中国、インドなど新興経済国の石油消費の爆発的増加、好況を背景にした米国の需要増に対して、産油国の生産能力が追いついていないことがある。中国、インドの石油消費は、この十年でほぼ二倍になり、中国の消費量は日本を追い抜いた。投機マネーが流れ込むのは、将来の需要逼迫(ひっぱく)を見越しているからだ。

今後は 消費さらに増加 増産能力は限界

 価格沈静化のため、国際エネルギー機関(IEA)は、日本など加盟二十六カ国に石油備蓄六千万バレルの市場放出を求めたが、抜本的な対策にはなりそうもない。ハリケーンで米国の製油施設が被害を受け、「当面一バレル百ドルまで上昇する」との見方もある。

 IEAによると、二○○五年の需要見通しは前年比2・0%増の日量八千三百七十万バレル。約四分の一を占める米国の需要見通しは同1・0%増の同二千九十万バレルで、原油高でも消費は減らない。

 さらに新興経済国の需要も拡大の一途だ。中国の需要見通しは同4・9%増の同六百七十五万バレルで、今後も毎年約五十万バレルずつ増える。世界の原油需要は三○年まで年率1・6%で増加を続け、日量一億五千万バレルに膨れ上がる見通し。

 一方、世界の埋蔵量の八割を占める石油輸出国機構(OPEC)や、米国やロシアなどの産油国も能力いっぱいの原油生産を続けているが、一九八○−九○年代の需要伸び悩みで開発投資が控えられたため、急激な増産は望み薄。さらにイラクの戦後の混乱も供給不安を増幅している。

 最大消費国の米国では製油所は約三十年間も新設されておらず、石油製品を製造する精製能力が不足、高騰に拍車をかけている。地球温暖化防止と相まって、本格的な消費節約が始まらない限り、原油価格は簡単には下がりそうにない。

日本への影響は 灯油の価格上昇で道民生活に打撃も

 日本は二度の石油危機の教訓を踏まえて、重厚長大産業や電力業界で天然ガスなどへのエネルギー転換が進んでおり、石油危機が再現する恐れは少ない。

 ただ、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は九月初めに十三年八カ月ぶりに一リットル百三十円台に乗せるなど、石油製品価格の値上げが始まり、軽油を使うトラック業界、ジェット燃料を消費する航空業界、石油を製品原料とする素材産業などの経営を圧迫しつつある。

 また道内では九割の世帯が暖房の熱源を灯油に頼っている。九月の店頭売り価格は一リットル=七十円で、昨冬より約十五円上昇した。価格の大勢は需要期に入ってからの配達価格で決まる。石油業者と消費者とのせめぎ合いが激しさを増すことが予想されるが、便乗値上げで特に高齢者、低所得者世帯に不測の事態が起こらぬよう、国、道、地方自治体は万全の対策を求められている。

メ モ

 昨年1年間の世界における原油生産量は41億1831万キロリットル。このうち石油輸出国機構(OPEC)加盟11カ国の生産量は40.6%を占めている。

 全生産量に占めるOPECの比率は、第1次石油危機前に約6割を占めていたが、非OPECの北海油田(英国、ノルウェー)や中国、ロシア、メキシコなどが生産を増強したことにより徐々に低下。これに伴い価格決定における発言力も低下している。

 今回の原油価格高騰に対しても、OPEC側はたびたび生産枠増をアピールしてきたが、生産余力がほぼ尽きかけていることもあり、過熱する相場を冷ますことには成功していない。