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防衛省


 防衛庁や国防関係議員の悲願である「防衛省」昇格に向けた動きが現実味を帯びてきた。自民、公明両党は十二月初旬に省昇格で合意、政府は来年一月召集の通常国会に関連法案を提出、成立を目指す構えだ。先の衆院選での自民党大勝が議論を後押ししているが、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題で日中、日韓関係が悪化する中、周辺諸国の反発も予想される。


昇格の利点 出動の手続き簡素化

主要国の国防費、陸軍兵力
  国防費(防衛費) 陸軍(地上軍、陸自)
米国 4,605億ドル 50万人
英国 490億ドル 12万人
ドイツ 297億ドル 19万人
カナダ 101億ドル 2万人
フランス 400億ドル 14万人
オーストラリア 117億ドル 3万人
ロシア 652億ドル 36万人
中国 250億ドル 160万人
韓国 164億ドル 56万人
日本 403億ドル 15万人
※防衛年鑑(05年版)などから作成
※国防費は04年(ロシアは03年推定)
※日本の防衛費は05年度予算額を1ドル=120円で算出
 「防衛力の果たす役割が大きくなっている状況を考えると、日本も主任大臣を置くことが望ましい」。防衛庁の守屋武昌事務次官は十二月上旬の記者会見で、防衛省昇格の必要性を強調した。

 防衛庁サイドが強調する省昇格の利点はいくつかある。

 まず事務手続きの簡素化だ。国家行政組織法は外務、財務、総務など計十機関を省に位置付ける一方、防衛庁は金融庁や警察庁と同じ内閣府の外局だ。予算要求や法案、幹部人事は内閣府の長である首相を通じて閣議にかけなければならない。省になれば防衛相の権限となり、煩雑な手続きを省ける。

 武力攻撃事態の際の防衛出動や海上警備行動の承認を得るための閣議開催も直接求められるようになり、迅速な対応が可能になる。

 防衛庁がそれ以上に重視しているのは国防を担う機関としての「格」だ。海外では米国、英国、ドイツ、ロシア、韓国、中国など主要国のほとんどが国防組織を省に位置付けており、肩を並べることができる。

背景 公明の発言力低下 自民国防族に勢い

 これまで何度となく浮かんでは消えた省昇格問題が再びクローズアップされているのは、衆院選で自民党が単独で国会運営を主導できる絶対安定多数を確保、公明党の与党内での発言力が低下した影響が大きい。

 公明党の神崎武法代表は昨年三月の講演では「重要課題で合意できない時には連立解消もあり得る」とけん制していたが、今年十一月の講演では「名称を『防衛国際平和省』や『防衛国際貢献省』にしてもいい」と述べ、早々にお墨付きを与えた。見返りに自民党と児童手当の支給対象拡大で合意したほうが得策と判断したためだ。

 民主党も「新国防族」と呼ばれる前原誠司氏の代表就任で右傾化を強めており、ブレーキ役にはなり得ない状況だ。

 自衛隊を取り巻く環境も様変わりしている。北朝鮮による核の脅威や中国の軍事力増強で東アジアの安全保障環境は変化。一方で、イラク人道復興支援活動をはじめ自衛隊の海外活動は年々拡大しており、政府・自民党内では「高支持率の小泉首相が在任中の今が省昇格のチャンス」(国防族)との声が強い。

海外は 警戒感強める中国 韓国では関心低く

 周辺諸国では中国が敏感に反応している。

 中国紙・青年参考は、防衛省昇格の動きに関連して、自衛隊から「自衛軍」への移行は《1》仮想敵の確定《2》対外的武力活動の合法化《3》装備の制限の撤廃−を意味すると指摘。米軍とともに台湾海峡に関与を強めることへの危機感をにじませ、「受動的防衛から能動的進攻に変わる」と批判している。

 中国国内では、小泉首相の五回目の靖国神社参拝を受けて「日本軍国主義の復活を警戒せよ」(週刊誌・瞭望)などの論調が拡大。中国指導部は今後、歴史認識問題を絡めてけん制を強めてくる公算が大きい。

 一方、韓国では一部新聞が短く取り上げた程度で、あまり関心が高まっていない。

 東南アジア各国では、報道すら見当たらない。マレーシアの国営通信社で国際問題を担当するジャマル・モハド記者は「六十年前なら大変な問題だっただろうが、防衛省への昇格で、日本がアジアの脅威になることはない」と話す。

 ただ、韓国などでは報道の風向きが突然変わり、防衛省昇格問題があらためて問題視される可能性もある。

メ モ

 防衛庁の省昇格をめぐっては、1964年に池田勇人内閣が防衛省設置法案を閣議決定したが、池田首相が病気で退陣したことなどから国会提出は見送られた。その後、橋本龍太郎内閣の中央省庁再編論議で再燃したが、連立与党の一員だった社民党が「周辺諸国の反発を招く」と反対、政府の行政改革会議は最終報告で結論を先送りした。

 2001年には連立与党だった保守党が衆院に防衛省設置法案を提出。翌02年には自民、公明、保守の与党三党が有事関連法案成立後、省昇格問題を最優先課題とすることで合意したが、公明党内の慎重論は根強く、法案は審議されないまま03年の衆院解散で廃案となった。