もっと知りたい

もっと知りたい
メニューに戻る
小学校の英語必修化


 義務教育における英語指導が転機を迎えようとしている。「使える英語の習得」を見据え、文部科学省の中央教育審議会外国語専門部会は三月、小学五年生からの必修化を提言する報告書をまとめた。文科省は学習指導要領の見直しでカリキュラムへの導入を検討しているが、教員や授業時間の確保など課題も山積している。(池田祥)


背景 保護者に高い関心

 小学校から英語を教える意義について、中教審の報告書は「外国人と積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育て、外国への理解を深めること」を挙げる。

 授業では「英語に慣れ親しむ」ことを主眼に置く。英語嫌いの児童を生まないよう、内容は簡単な単語を話したり聞いたりする程度にとどめる。また、教科として成績に直結させず、「総合的な学習の時間」などで実施する形を求めている。

 必修化論議の背景には、幼い時期からの英語教育に対する保護者側の高い関心がある。二〇○四年度の文科省の調査では公立小学生の保護者の70・7%が「英語を必修にすべきだ」と回答。こうした社会情勢を受け、総合的な学習の一環として英語教育を行う公立小は○五年度、93・6%に上った。歌やゲームなどで英語に親しむ活動が一般的で道内でも約七割が導入している。

現状 導入率既に9割も 内容やレベルに差

 すでに多くの小学校で英語教育の取り組みが行われている中、なぜいま必修化を目指すのか。文科省幹部は「九割の小学校が導入しているとはいえ、内容や時間に濃淡がある。中学の英語教育へスムーズにつなぐためには、必修化して一定のレベルにならす必要がある」と説明する。

 報告書はまた、日本人の英語能力について「国際的にみて十分ではない」と厳しい評価を下している。その上で、インターネットの普及などグローバル化が進む世界で活躍する人材を育てるためには「使える英語」をいかに身につけさせるかが重要とし、「国を挙げた英語教育の充実」を促している。

 文科省によると、タイや韓国など非英語圏のアジア諸国でも一九九○年代後半から小学校で英語を必修化する動きが広がっているという。

 保護者の教育熱が高い韓国は九七年から三年生以上で必修化され、週二時間程度の授業を行っている。一方、経済発展の著しい中国でも、二〇○一年から都市部を皮切りに必修化が進む。小学校から高校まで一貫したカリキュラムで指導するなど、国際社会で通用する人材の育成に力を入れており、地域によっては小学一年生から始める学校もある。

 欧州でもフランスが○七年からの必修化を予定している。

課題 教える側どう育成 授業時間の確保も

 ただ、日本の小学校で英語を必修化するには障害も多い。最大の課題は、教える側の人材をどう育てるかだ。現在、英語を取り入れている小学校のほとんどは学級担任が教えているが、小学校の教員には英語の免許が必要ないため専門的な指導は望めない。

 文科省は「大学の小学校教員養成課程に英語を組み入れることも検討したいが、具体的な論議はこれからだ」とし、当面は現場教員の研修プログラムの開発を進める考えだ。

 授業時間の確保も課題だ。報告書では「年間三十五時間(平均週一時間)程度」を念頭に置いているが、現行の「ゆとり教育」の枠組みで必修化されても十分な時間を生み出すことは難しい。最終的に必修化を提言した中教審の論議でも「授業時間が現状のままで、『使える英語を身に付ける教育を』と言っても不可能だ」と指摘する委員がいた。

 文科省は「現在、見直しを進めている学習指導要領の中で、国語や算数など他教科を含めて調整を図っていきたい」としているが、英語必修化の具体的な時期は明らかにしていない。

メ モ

 文科省が今年2月、全国の公立小学校約2万2千校に実施した調査では、6年生への英語授業実施時間は平均13・7時間でほぼ月1回のペースだが、36時間以上と週1回ペースで行う学校も700校を超えた。小学1年生で英語教育を実施した学校も75・1%に上った。

 ただ、保護者の70%が「必修化」を望んだのに対して教員は54%が反対。肯定する教員は37%にとどまった。英語の専門教育を受けていないことへの不安が背景にあるとみられる。日本児童英語教育学会によると、韓国では教員に200時間以上の研修を促すなど、英語指導の専門性を備えた教員による授業への移行を進めているという。