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フランスの少子化対策


 日本の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の数)が昨年、過去最低の一・二五に落ち込むなど、先進諸国が少子化に悩むなか、フランスの同出生率は、ほぼ一貫して上昇、昨年は欧州でもトップクラスの一・九二に達した。背景には、「子供二人以上」を誘因する手厚い少子化対策とともに、家族についての柔軟な考え方があるようだ。(パリ・土江富雄)


家族手当 子供2人以上で支給

 フランス政府は一九九○年代初頭、少子化対策に本格的に取り組み始め、同国の出生率は九四年の一・六六を底に緩やかに上昇している。

 収入に関係なく支給される家族手当は、子供一人の家庭は対象にならないが、子供二人の家庭は、毎月約百十七ユーロ(一万六千三百八十円)を国から受け取る。子供が十一歳以上になると、額は加算され、二十歳まで支給される。三人目からは一人に付き約百五十ユーロ(二万千円)と給付額を倍以上に増やす。とりわけ、子供三人以上の家族に対する優遇措置は、国鉄、地下鉄の運賃割引、美術館、ホテルなどの文化・レジャー施設の料金割引など、生活のすみずみに及ぶ。

 このほか、所得制限はあるものの、出産手当、三歳未満の子供を対象にした児童手当など約三十種類にも及ぶ手当を用意。こうした子育て支援策とは別に、公立であれば、高校までの学費も無料だ。日本などと比べ、教育費の負担がはるかに軽く、子供を産み育てやすい環境にあることは間違いない。

育児支援 3歳まで休職可能 復職後も地位保障

 フランスでは、五十歳未満の女性の約八割が働く。出産、育児のために退職を余儀なくされることがないように、充実した育児休業制度が女性の社会進出を支えている。子供が三歳になるまで両親の一方が休職することができ、国はこの間、給与水準に応じて月額最高約五百十二ユーロ(七万千六百八十円)の休業手当を支給する。さらに企業は、復職後、以前と同等の地位を保障しなければならない。

 ただ現実には、子供が三人目ともなると、一般に女性の年齢が高くなり、長い休業の後では、職場復帰が困難になることも想定される。このため、三人目の子供からは、休業期間を一年に短縮する代わりに、約七百五十ユーロ(十万五千円)に増額された休業手当を受け取る方法も選択できる。

 また、子供の多い世帯は税制上の優遇措置を受けるほか、ベビーシッターの費用は控除の対象にもなる。

家族形態 結婚にとらわれない 平等な社会風土実現

 フランスでは、二○○四年に誕生した子供の46・4%が、結婚していないカップルから生まれた婚外子だった。これはスウェーデンなど北欧諸国に匹敵する比率だが、フランスの場合、八○年代半ばには20%台だったから、この二十年間で倍増したことになる。

 来年の大統領選で、社会党の最有力候補と言われる女性のロワイヤル氏は、同党トップのオランド第一書記との間に四人の子供をもうけたが、結婚はしていない。これは特異な例ではなく、フランスではごくありふれた話である。

 この底流には、既成の価値観を覆した一九六八年の五月革命以降の社会の変化があると言われている。「男は仕事、女は家庭」という古めかしい役割分担が崩れ、結婚という形式にもとらわれなくなった。

 九九年には、結婚していなくても、共同生活をするカップルが税制、社会保障などで、結婚と同等の権利を得ることができるPACS(連帯市民契約)も導入された。

 離別後、子連れで新たなパートナーと同居するカップル、一人親の家庭など家族形態は多様化したが、基本的に子供を扶養していることを証明すれば、種々の給付を受けることができる。

 手厚い経済的支援に加え、いかなる形の家庭に暮らす子供でも、平等に社会の一員として受け入れる風土が、特に女性にとって、子供を持つことの心理的負担を軽くしているようだ。

メ モ

 フランスの少子化対策は、子供を持つ家族が暮らしやすい社会を目指す総合的な政策ととらえられている。市民の新たな要望を家族政策にきめ細かく反映させるため、政府首脳、労組、経営者団体、市民団体の代表らが毎年、家族問題についての会議を開き、具体的な施策を詰める。

 経済協力開発機構(OECD)によると、家族政策への財政支出は、国内総生産(GDP)比で、日本の0・6%に対し、フランスは2・8%に上る。財政事情は厳しいが、家族政策の支出は「国の将来を見据えた投資」とみなされており、子育てを社会全体で支えるための高いコストが支持されている。