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教育再生会議と中教審


 安倍晋三首相が政権の最優先課題として掲げる「教育再生」。昨年十月、その推進力として設置されたのが官邸直属の教育再生会議(野依良治座長)だ。各界の著名人を委員に招き、矢継ぎ早に提言を出している。だが、教育分野の制度設計は本来、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(中教審、山崎正和会長)が担っている。再生会議と中教審の違いを整理した。(渡辺創)


官邸直属再生会議 矢継ぎ早、多くの提言

 教育再生会議の狙いは「公教育の再生」。子どもたちの学力と規範意識が低下しているという現状認識から、学力向上と規範の浸透を最優先に掲げる。ただ、その土台には「戦後レジーム(体制)からの脱却」を持論とする安倍首相の復古的な思想が見え隠れする。

 再生会議発足と前後して、いじめ苦による自殺、高校の必修科目履修漏れなど教育をめぐる問題が続出したこともあり、再生会議はさまざまな提言や報告を出してきた。

 生徒数に応じて学校の運営資金を配分し、学校間の競争を促進する「教育バウチャー(利用券)制」、大学の九月入学制への移行を打ち出したほか、今年一月の一次報告では《1》授業時間の一割増《2》いじめ加害者への出席停止《3》不適格教員の排除《4》教育委員会の改革−などを盛り込んだ。

 それぞれアピール度は高いものの、効果に疑問符がつくものも少なくない。教育バウチャー制は「教育に市場原理を持ち込む」との批判が根強いほか、不適格教員の排除などは懲罰的な色彩が強すぎるという指摘もある。メンバーに財界人が多く、教育学者などの専門家が少ない点にも理由がありそうだ。

 再生会議の提言をどう具体化するかも大きな課題。再生会議は閣議決定で設置されたが、法律の裏付けはないからだ。教育行政をあずかる伊吹文科相は「再生会議は総理の助言機関で政治的な重みはあるが、再生会議がいろいろ決めるわけではない。法案にする場合は中教審で論議する」とけん制さえする。

中教審に影響 3法の改正案審議 異例のスピードに

 その中教審は、国家行政組織法に基づいて設置される。文科相の諮問を受け、教育の将来像や制度設計にか関する答申をまとめるのが役割だ。「国民のさまざまな層の意見を反映させ、中立性を保つ」(伊吹文科相)ために委員を幅広く選び、答申まで数カ月から二年かけて議論するのが通例となっていた。

 ところが今年に入り、再生会議とのからみで、審議日程に大きな変化を余儀なくされた。安倍首相の「スピード感をもって結果を出す」との意向もあり、再生会議の提言を実現するために地方教育行政法(地教行法)、学校教育法、教員免許法の教育関連三法の改正案を今国会に提出する政治日程が組まれたのだ。山崎会長をはじめ二月上旬に新メンバーに代わったばかりの中教審の初仕事は、教育関連三法案の骨子作りとなった。

 当初の法案提出期限が三月中旬とされており、土曜、日曜や夜間に審議する異例の日程が続いた。教員免許法と学校教育法は中教審での過去の議論もあり、順調にまとまった。だが、教育委員会改革にかかわる地教行法は「地方分権に反する」とする地方代表委員の反対で審議が難航。わずか一カ月間のスピード審議の末、今月十日にまとめた答申は異例の賛否両論併記となった。

 これを受け、文科省は法案作成を急ぎ、今月中に国会提出にこぎつけたい考えだ。

課 題 「政治に翻弄された」委員からも批判の声

 中教審は答申こそまとめたが、今回の審議については当の委員たちからも「突貫工事で造った建物は手抜き工事になる」「中立性を保つどころか政治に翻弄(ほんろう)された」との批判が相次いだ。「百年の計」とも言われる教育問題。それを議論する両輪としての教育再生会議と中教審の役割調整は、まだ十分には済んでいない。

メ モ

 教育再生会議は安倍晋三首相や伊吹文明文部科学相らと、ノーベル賞受賞者の野依良治座長をはじめとする有識者委員17人で構成する。首相ブレーンの葛西敬之JR東海会長ら財界人のほか、「ヤンキー先生」として知られる義家弘介・担当室長、日本オリンピック委員会の小谷実可子理事ら有名人を登用した。審議は非公開で、議事録が後日に発表される。

 一方の中央教育審議会は1952年に発足。現在は劇作家・評論家の山崎正和会長以下30人の委員で構成。教育制度、生涯学習など5分科会があり、計100人近い臨時委員も加わる。教育学者や財界人のほか、労働界の代表など人選が幅広いのも特徴だ。審議はすべて公開され、委員の意見の細かなニュアンスも分かる。