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自治体財政健全化法案


 政府が今国会に提出して成立を目指す「自治体財政健全化法案」は、夕張市のような財政破たん団体が出るのを未然に防ぐ制度だ。財政の悪化状況を見極める四つの健全化判断指標を導入して自治体の財政状況を全面的に把握する。これまで対象にしてこなかった国民健康保険をはじめとする事業会計や第三セクターの不良債務などもチェック対象とした。自治体財政への監視基準を強化することで、財政危機の早期発見と健全化を促し、住民生活への影響を最小限にすることを狙っている。(白井高秋)


特徴は 深刻な赤字 早め発見

 自治体財政再建制度は“夕張ショック”で一躍注目を集めている。現行の地方財政再建促進特別措置法では、一般会計の赤字を対象にした指標があるだけで、観光事業会計などに膨大な赤字を抱えていた夕張市の財政悪化を早期発見できない構造的欠陥があり、制度自体を抜本的に見直した。

 政府は二○○八年度決算が出そろう○九年度から新法を施行する方針だ。新制度では財政状況の悪化が軽度の「早期健全化団体」と、悪化が深刻化した「財政再生団体」の二段階に分けて財政再建を行う。現行法にない早期是正対策を盛り込んだのが特徴だ。

是正の手順 4指標でチェック 悪化なら外部監査
 
 財政状況を見極める健全化判断指標としては《1》実質赤字比率《2》連結実質赤字比率《3》実質公債費比率《4》将来負担比率−の四つを用いる。

 このうち《2》と《4》が新たに設ける指標で、《2》は国民健康保険事業など全会計を合わせた赤字額の割合を示し、《4》は第三セクターや地方公社なども含めて自治体が将来に負担する債務の大きさを表す。《1》は現行法で再建団体入りする基準になっており、《3》は二○○六年から公表が始まり、自治体の起債制限をする目安とされている。

 四つの健全化判断指標すべてに、早期健全化基準を設け、一つでも基準を超えた場合は「健全化団体」として健全化計画策定と公認会計士による外部監査を義務付ける。

 自治体が自主的に歳出削減を中心とした財政立て直しに取り組み、赤字の解消と悪化した指標を基準値未満に改善することが目標になる。総務相や都道府県知事が早期健全化が難しいと判断した時には計画の見直しを求める勧告を行う。

 将来負担比率を除く三指標には、財政がさらに悪化した目安になる財政再生基準も設ける。いずれかの指標で基準値より悪化すると「財政再生団体」になる。再生団体は現行の再建団体に当たり、自治体は職員人件費抑制などの歳出削減と増税による歳入増加を柱とする再生計画を作成し、赤字の早期返済を促される。再生期間中の予算編成や事業の執行などは総務省や都道府県の監督下に置かれ、自治体の自由裁量は事実上なくなる。

 総務相が再生計画に同意すると、累積した赤字を返済する資金繰りのための再生振替特例債(赤字地方債)の発行が認められる。現行法で再建団体になった夕張市は新法施行後は再生団体に移行し、赤字地方債の発行が可能になる。

今後の課題 焦点は基準作り 今秋までに決定

 今後の最大の焦点は、各指標における早期健全化基準と財政再生基準の設定だ。早期健全化団体になるだけでも、該当する自治体は金融機関からの借り入れ条件などが厳しくなるなど、行政運営に影響を受けるのは避けられそうにない。

 自治体の命運を分ける基準は今秋までに政令などで定める方針だ。総務省は現在、全国約千八百市町村の二○○五年度決算を対象に、健全化判断指標を当てはめた試算を進めさせている。

 財政悪化自治体の一覧表を作った上で、自治体財政の早期健全化を促すのが狙い。健全化団体と再生団体が○九年度に一挙に現れると、総務省や都道府県側の対応がおろそかになる懸念があり、基準作りは、該当団体が続出しない、「究極の一致点」(総務省幹部)を探る作業となる。

メ モ

 竹中平蔵前総務相の主導により、2006年7月に閣議決定した「骨太の方針2006」の中に「再建法制の適切な見直し」が明記され、自治体財政再建手続きの抜本的見直しが一気に本格化した。8月には総務省に「新しい地方財政再生制度研究会」(座長・宮脇淳北大公共政策大学院院長)を設け、具体的な枠組みづくりに着手した。9月に就任した菅義偉総務相も竹中路線を引き継ぎ、見直しを後押し。同研究会が12月にまとめた最終報告書が新制度の原案になった。竹中、菅両氏が強い関心を示した破たん自治体の借金を棒引きする債務調整制度の導入は、時期尚早として盛り込まれなかった。