50 ペットブームの陰に
2001/04/25

 不況の中でもペット産業は着実に成長しているようだが、ブームの背後にあるものをふと考えさせられる時がある。

 先日、ワクチン接種に幼いコーギー犬を連れて来院されたBさん。中学生の息子さんが情緒不安定で、犬を与えれば心も和むのではないかと購入したとのこと。親にすれば、いじめや家庭内暴力、少年犯罪と耳をふさぎたくなる話題が多い昨今、わが子に何かしてやれないかとの思いがあったのだろう。しかし、肝心の息子は同伴せず、犬を与えただけでは解決するものではないと、気になった。

 テレビゲームやパソコン、携帯電話と同じような感覚で「モノ」として扱われたら、犬も迷惑だろう。現代の子供たちは、われわれの時代と違って、手を伸ばせば何でもあり、汗して自然を体感することも少なく、学校や塾と忙しい毎日だ。小さい時からテレビ画面との一方通行の会話に慣れ、対面の会話に不慣れな子が多い。動物を与える以前に子供の生活スタイルを見直し、何よりも家族を中心にした会話の必要性を感じた。動物はそんな乾いた家族の潤滑油として大いに活躍してくれるだろう。

 一方、老後の生きがいや健康維持を目的に動物を飼うケースも、社会の老齢化に合わせて増えている。動物の死(ペットロス)に出合った際の老人の心のケアの問題もあるが、飼い主の入院や死亡後の動物の世話も現実の問題として浮かび上がり始めている。

 幼少時から老後まで、動物と癒(いや)し癒される関係といわれながら、その実、人間の都合が前面に出ている。ペットブームの背後には、新たな社会問題も見え隠れする。

 筆不精の私が思いがけず、一年にわたり筆を執ることになり、何とか終えることができ、ほっとしております。ありがとうございました。

(中尾喜一=札幌・西野アニマルクリニック院長)

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