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正しく使えます?おはし
2007/02/22(木) 朝刊
 つまむ、すくう、押さえる…。たった2本の棒なのに、あらゆる動作ができる、おはし。日本の食卓には欠かせない存在だが、最近は上手く使えない人が増えているという。そんな傾向を憂える声も強く、ついには今春から「正しいはしの使い方」を入試の実技科目に加えた私立高校まで現れた。さあ、「はしが苦手」な大人も負けてはいられない。おはし、上手に使えますか?(大能伸悟)
入試科目に登場 長崎の私立高

北大生も悪戦苦闘/安倍首相も苦手? こつは…下は固定、上のはし動かす

長崎の私立高校で、今春から入試科目にもなった「はしの使い方」。難関をくぐりぬけた北大生たちも「合格できるかな…」
 「高校生にもなって、はしも持てないなんて、恥ずかしか!」

 受話器から聞こえるのは、威勢のいい長崎弁。声の主は、長崎県佐世保市にある久田学園佐世保女子高の久田順子校長(71)。一月末の一般・推薦入試で数学、国語に加えて「正しいはしの使い方」をテストした。

 試験は十分間。おはじき、さいころ、インゲン豆、ビー玉、大豆、小豆の六種類を、それぞれ十粒ほど皿に入れ、特注の六角形のはしを使って、別皿に移してもらう。

 前代未聞の入試だが、一体、なぜ。久田校長は「家庭のしつけができているか、入学前に判定するためです。今の子は、本当にはしが持てないんですよ」と説明する。

 茶道、華道を必修科目にするなど、同校は「しつけ教育」を重視しており、食事のマナーも重点課題。なのに、最近は間違った持ち方どころか、食べ物をつまめない生徒も目立つ。

 中には、はしを二本揃えてスプーンのようにご飯をすくう生徒もいるという。久田校長は「しつけができていない子どもに、努力や向上心を期待できるでしょうか」と強調する。

 確かに、しつけは重要だが、まさか高校入試とは。合格点に達する人は、どれほどいるのか。試しに北大生に挑戦してもらった。

 「僕は不合格かもしれませんね」。大学院修士課程一年の男子学生(25)は苦笑い。二本のはしが交差する「交差型」で二十年間、食事をしてきた。窮屈そうな持ち方だが、用意したさいころ、小豆を器用に拾った。「別段、困ったことはない。入学試験にするほどのものかな」と語る。

 一方、経済学部三年の女子学生(21)は正しい持ち方だったが、「あれ、結構難しい」と小豆に悪戦苦闘。「入試は自信がない。中学生までならいいけど、高校や大学受験にまで導入されるのは変」と話す。

 白状するが、記者もはしの持ち方には自信がない。学生に限らず、大人だって合格できるとは限らない。センチュリーロイヤルホテル(中央区)の神田吉美支配人(47)も、学生や社会人対象のマナー講座では「三割は間違った持ち方。中には、これでどうやって食べるのかと、首をかしげたくなる人もいる」と話す。

 間違った持ち方の代表格は「握りばし」「人さし型」「ペン型」の三種類。握りばしは五本の指を全部使ってはしを握り、ペン型は薬指を使わず、鉛筆を持つようにする。いずれも、はし先がうまく開かない。一方、人さし型は向かいの人を指さす格好になるので、失礼とされている。

 では、正しい持ち方とは。神田さんによると、手順は二段階。《1》一本のはしを、薬指の第一関節に乗せて、はしの上部を親指と人さし指の付け根で挟み、固定する《2》もう一本のはしの真ん中あたりを人さし指と中指の第一関節で軽く挟み、親指の先をそっと添える。

 下のはしは固定したまま、上のはしだけを動かすのがポイントだ。

 「マナーはみんなが気持ちよく食事を楽しむために必要。練習あるのみです」

 再び、久田校長。はしの話をするうちに、安倍晋三首相が掲げる「美しい国」の話になった。

 「はしの文化は、日本人の誇り。全国の高校ではしの試験をしてもらいたい。美しい国をつくるには、最低限のプライドではないでしょうか」

 なるほど。でも、そう言えば昨年末の写真週刊誌に、安倍首相がはしを使えないという内容の記事があった。掲載された証拠写真では、安倍首相が「ペン型」で学校給食を楽しんでいる。

 それを聞いた久田校長。また長崎弁になった。

 「首相にもなって、恥ずかしか! もし事実なら、即刻入学してほしい。いつでも正しい使い方、教えますよ」

全国で募る関心

埼玉に「国際箸学会」 札幌の専門店人気 脳を活性化/デザイン多彩

手のサイズに合わせた4種類のはしを販売する「にほんぼう」。津田店長は「輪ゴム練習法」を薦める
 古くは「古事記」にも登場する、おはし。この身近な生活用具への関心が、最近、静かな高まりを見せている。

 目立った動きとしては「国際箸(はし)学会」の誕生がある。昨年十一月、埼玉を拠点に活動を始めた。はしの正しい持ち方を普及させようと、小学校で紙芝居を上演するなどの活動を続けている。

 学会設立のきっかけは意外にも、「ものづくりの振興」という。

 三浦広紀常務理事(54)は「はしは指先を器用に使うため、脳を活性化する。はし中心の食生活はものづくりの基本。子どもたちに継承しなければ」と語る。

 発足当初は十人だった会員も、現在は五十人以上。まだ日本人だけだが、三浦さんは「中国や韓国、ベトナムなど、はしを使う人は世界人口の三割。いずれは全国、海外でも活動したい」と構想は壮大だ。

 一方、札幌市内でも、はしの専門店が人気を呼んでいる。丸井今井札幌本店(中央区)にあるはし専門店「にほんぼう」もその一つ。

 種類、サイズとも多彩で、目移りしてしまう。店員はいわばはしの専門家。選び方はもちろん、持ち方を教わる客もいるそう。

 津田真矢子店長(30)は手の大きさにあったはし選びを薦める。

 津田さんによると、ベストは人さし指と親指を直角にし、広げた長さの一・五倍。ちなみに同店は十六−二三・五センチの四種類のはしをそろえているそう。「まずは、体にあったはしを」とアドバイスする。

 ついでに正しい持ち方にするための助言もお願いすると、「輪ゴムを使った練習はどうでしょう」。慣れない人は、正しい持ち方をすると親指に余計な力がかかる。輪ゴムを8の字にし、親指と人さし指にかけると、スムーズに動かせるのだという。さっそくやってみよう。