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 2003/01/10(金)
 調査報告
その4 3点セット
 肉、たれ、鍋。ジンギスカンを支える3点セットだ。どれが欠けても、おいしいジンギスカンを食べることができない。調査を進めると、羊肉が予想以上にヘルシーだったり、鍋のメーカー大手が岩手県にあったりと知らなかった事実が次々と出てくる。探偵コンビはジンギスカンの世界の奥深さに感じ入った。
 意外な健康・美容効果 貧血予防、ダイエットにも
カルニチン、鉄分、リノレン酸…。羊肉はさまざまな栄養素が含まれているヘルシーな食材だ=札幌市東区北7東9、サッポロビール園
 調査を続けるうちに、ジンギスカンの魅力がどんどん分かってきた。でも、肉料理なのがちょっぴり引っ掛かる。健康面ではどうなんだろう。羊肉の栄養価について話を聞こうと、北大大学院の服部昭仁教授(57)の研究室を訪ねた。

 「羊肉は貧血に悩む人に効果的。鉄分の含有量が他の食肉より多いし、吸収されやすい形で含まれているんですよ」。鉄分が不足しがちな女性にはうれしい話だ。思わず身を乗り出した。

 百グラムあたりの鉄分は、牛のサーロインや豚ロースでは一ミリグラムに満たない。それに比べ、わがマトンのロースには二・三ミリグラムもあるそう。

服部昭仁教授
 「それだけではありません」と、服部教授は続けた。最近話題になっているカルニチン(アミノ酸の一種)の効果も期待できるという。

 「カルニチンは脂肪の燃焼を促進するので、疲労を抑制したり、ダイエット効果がある。羊肉には牛肉、豚肉、鶏肉と比べ飛びぬけた量が含まれています」

 羊肉を食べると、ダイエットにつながり、パワーもわいてくる。美容と健康を大切にしたい女性にはもちろん、仕事に励むお父さんや、育ち盛りの子供たちにも力強い味方なのだ。

 一方、酪農学園大の鮫島邦彦教授(64)も耳寄りな話を教えてくれた。

 「羊肉には、不飽和脂肪酸のリノレン酸が他の食肉より多い。この物質は血栓症の予防や高脂血症の抑制につながります」。百グラム当たり、ラムのロースには約二百ミリグラム含まれ、和牛の肩ロースの四倍もある。

 ところで日本の羊肉自給率は、輸入自由化などの影響で、わずか0・3%(二〇〇〇年)。ほぼ一〇〇%を輸入に頼っているのが現状だ。農村など至るところで羊を飼っていた、という四十年ほど前の話が夢物語のように聞こえる。

 年間輸入量は減少傾向が続いていたが二〇〇〇年に底を打ち、〇一年は二万七千トン弱と増加に転じた。オーストラリアとニュージーランドの南半球の二国がほぼ独占している。

 ニュージーランド産の輸入の大半を手がけるアンズコフーズ(本社・東京)は「ニュージーランド産の羊は牧草だけで育つので、食品の安全性に注目が集まる中、一層需要が高まっています」。ひつじ年の追い風も吹く。同社は羊肉ブームのきざしを感じている。(鈴木順子)

たれ
 ベル食品 20種超す材料調合 ソラチ 青果でまろやかに
とろりと黒光りするジンギスカンのたれ。メーカーは材料や製法に工夫を重ねている
 ベル食品(本社・札幌)は一九五六年(昭和三十一年)以来、ジンギスカンのたれを作り続けてきた。道内シェア七割強を誇るトップメーカー。あのオレンジのラベルのびんは、確かにどこでも見かける。ここまで支持されているのはどうしてなんだろう。

 「ジンギスカンの主役はあくまでも肉。たれは酸味と辛みをポイントに、肉のおいしさを最大限引き出す脇役なんです」。門間芳克専務(58)が切り出した。

 でも、ただの「脇役」ではない。

 たれの材料は二十種類を超える。定番のタマネギひとつとっても、すりつぶしたもの、加熱して甘みを出したものなど数種加える。「たれに何回付けても同じようにおいしい」ことを目指し、微妙な調合が今も続いている。

 たれの売れ行きは当初おもわしくなく、経営も苦しかった。そんな時、デパートに並ぶジンギスカン鍋を見た役員がひらめいた。「これはいけるぞ」。精肉店向けの景品として鍋をつけるアイデアが生まれた。

 この鍋商法が起死回生のホームランに。たれはジンギスカン料理の広がりもあって爆発的に売れた。今では二百ミリリットルびん換算で年間二百二十万本も売る同社の屋台骨だ。

 この半世紀に塩味や甘みは幾分控えめになり、たれはソフトになった。だが、伝統に裏打ちされた基本は変わらない。

 七七年に三角だったびんを今の形に変えた。たれの中身は同じまま。それなのになぜか苦情が殺到した。「味が違う」「おいしくない」…。門間さんの「道民に根付いた信頼の重さを感じる」という言葉に、トップブランドの誇りが感じられた。

 はちみつ、みそ、赤ワイン…。道内準大手のソラチ(本社・芦別)のホームページを見ると、原材料が細かく公開されていた。

 「門外不出の秘伝」。たれについてのこれまでの聞き込みでは、どこに足を運んでも必ず突き当たる。ソラチもこれがすべてではあるまい。

 だが、小林靖博商品開発室主任(32)は開口一番、「隠している材料はありません。今は企業秘密の時代じゃないですよ」。予想は鮮やかに裏切られた。

 原材料リストを見ると、ショウガやニンニクなどの「定番」以外にトマトや洋ナシ、モモといった青果が目立つ。

 「昔は羊肉のにおい消しのため、ニンニクとショウガが多めだった」(小林さん)が、約二十年前、研究員が専門店を食べ歩き、果汁が効いた味に注目。青果が主体のまろやかなたれになった。

 安心な食材の使用と、オープンな姿勢に裏打ちされた「本物」を目指す姿勢を垣間見た思いがした。(渡辺創)

南部鉄器でおいしく メーカー、盛岡にあった! 道内にも数社
「鍋は自分の子供みたいなもの」。岩鋳の大岩さん(左)と橋本さんは口をそろえた=岩手県盛岡市
 帽子のような独特の形をしたジンギスカン鍋。探偵団は、年配者の証言で戦前にすでに存在していたことを確認した。だが、あの形については「鉄かぶとが変化した」「大陸から持ち帰ったものが原型」など、諸説ふんぷん。なぞを残したままなのはくやしいが、仕方がない。方向転換し鍋づくりの現場を歩いた。

 鉄瓶、ぐいのみ、フライパン。岩手県盛岡市の南部鉄器の老舗メーカー、岩鋳(いわちゅう)の工場には、ねずみ色に鈍く光る鋳物の山が連なっていた。左右に目を走らせると、紛れもないジンギスカン鍋。こんな所で出合えるとは…。

 案内してくれた同社の大岩良一事務課長(59)は「サッポロビール園や松尾ジンギスカン。北海道の特注鍋をずいぶん手がけています」。南部鉄器は保温性に優れていて肉がおいしく焼けるうえ、鉄分がとれるのがメリットという。橋本修一工場長(44)も「遠い北海道で使われているのはうれしい」と、鍋をいとおしそうに手にした。

 道内で鋳物のジンギスカン鍋を手がけるメーカーは二、三社になった。岩見沢鋳物(本社・空知管内栗沢町)は残り少ないそのひとつ。

 白井邦彦社長(56)は「全盛期は道内に十社近くありましたが、安い輸入品に押されて」と、さびしそうな表情。それでも、今後のことに話題が及ぶと「ジンギスカンは北海道の料理なんだから、鍋はかっちり作りますよ」。

 新規参入したメーカーもある。

 鉄製湯たんぽで知られるマルカ金属(本社・兵庫県尼崎市)は二〇〇一年から、板金をプレスした簡易鍋の製造を始めた。アウトドア用品も手がけていたものの、ジンギスカン鍋は初めてだ。年間五万枚でスタートし、〇二年は七万枚に増えた。

 大倉茂明営業部長(63)は「利幅は小さいが、需要はある。今年は十万枚が目標です」と力を込めた。(渡辺創)

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