参院選の公示が二十四日に迫った。過去三年間の「小泉改革」に有権者がどのような審判を下すのか、転機を迎えている年金制度や安全保障政策をめぐり与野党がどう対じするのか。結果は、今後の日本政治の進路を左右する。
2004参院選 明日への選択
<上> 長期政権

  強硬姿勢、改憲も視野


 「ようやく景気回復が本物になってきた。この改革の芽を大きな木にしたい」。十九日、岡山市内での街頭演説。小泉純一郎首相は好転した経済指標を披露し、改革路線の「実績」を強調した。

 昨年の衆院選は「政権選択」が焦点となった。今回の参院選は、過去三年余の小泉政権の「評価」が問われる。しかし、首相が胸を張ってアピールできる材料は、実はそう多くはない。

 「無駄な道路は造らせない」と大見えを切った道路公団民営化。先の通常国会で成立した民営化法は、民営化会社に新規高速道路建設の拒否権がないなど、道路族との妥協が色濃く残った。

 年金制度改革も、与党が年金制度改革関連法を力ずくで成立させたが、中身は負担の上限と給付の下限を見直したもので、抜本改革にはほど遠い。

 にもかかわらず首相が過去の政権に比べて高支持率を維持しているのは、したたかなイメージ戦略が奏功しているためだ。

 年金政局と化した通常国会の終盤。首相は自身の年金保険料未納問題の発覚にぶつける形で、北朝鮮訪問を表明した。世論の注目を未納問題から訪朝にそらすことで、政権のダメージは最小限にとどまった。予想外の行動や人事で「サプライズ(驚き)」を演出し、政権の不都合を覆い隠す“小泉流”の手法だ。

 さらに、自民党が先の衆院選で掲げたマニフェスト(政権公約)の表現があいまいで、改革の停滞感が実態よりも目立たないという要因もある。マニフェストでは、道路公団問題は「民営化推進委員会の意見を尊重し、法案を来年の通常国会に提出する」と抽象的。年金改革は、国庫負担割合の二分の一への引き上げなどが明記されているだけだ。

 参院選で自民党が目標の五十一議席以上を確保し、公明党と合わせて衆参両院で過半数を達成すれば、衆院解散がない限り、小泉首相の自民党総裁としての任期中(二○○六年九月まで)、国政選挙はない。首相は安定した「数」と二年余の「時間」を手にすることになる。

 そんな首相の視線の先にあるのは、「党是」である憲法改正だ。衆参両院の憲法調査会が○五年をめどに議論を終えることを踏まえ、一気に改憲に動くとの見方は強い。

 首相は二十一日の日本記者クラブ主催の党首討論会で、自身の厚生年金加入問題に関連し「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」などと国会で答弁したことについて「あれで良かった」と強弁した。日本の安全保障政策の質的転換を意味する自衛隊のイラク多国籍軍参加は、国会論議をほとんど経ないまま閣議決定し、政治不信を増幅させた。

 独善や頑迷が際立つ強硬姿勢。そこには長期政権を視野に入れ始めた小泉首相の危うさが透けて見える。(枝川敏実)