参院選は11日、投票日を迎える。争点となっている年金制度改革や自衛隊のイラク多国籍軍参加、地方分権のあり方など、何を判断材料に1票を託せばいいのか。それぞれの専門家に聞いた。  (4回連載しました) 
争点を読む 投票を前に
<4> 景 気    
     
    行革進め 既得権益にメスを
高橋進 日本総合研究所理事
主要5政党の公約・マニフェスト「景気」
<自民>
●2006年度に名目の国内総生産(GDP)2%以上の成長を達成、10年代初頭にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化
●「金融再生プログラム」に基づき04年度末までに主要銀行の不良債権比率を半減、金融機能を健全化
●中小企業再生ファンドを活用した支援を推進
●2年間でサービス業300万人以上の雇用創出。障害者の雇用機会拡大
●将来の消費税率引き上げについて国民的議論を行い結論を得る
<民主>
●徹底的な行財政改革で10兆円程度の歳出カット、プライマリーバランスの早期均衡
●ゼロ金利、量的緩和の異常な金融政策をできる限り早く終息させる
●中小企業向け助成や商店街活性化のための予算を7倍増、ローン利子所得控除制度を創設
●若者の就労や資格取得支援のためヤングワーク・サービスセンター整備
●炭素排出1トンあたり3000円程度の環境税創設
<公明>
●公共事業費は4年間で1兆円削減、04−07年を集中期間として税金の無駄遣いの洗い出しを徹底的に行う
●04年度中に不良債権問題正常化
●05年中に動産を担保にした中小企業向け融資を拡大
●新産業育成や規制改革で経済を活性化し新たな雇用500万人創出
●07年度をめどに消費税を含めた抜本的税制改革を実現する
<共産>
●公共事業などの歳出カットで10兆円の財源をつくり国民の暮らしや社会保障に活用
●資金繰り円滑化借換保証制度を拡充
●中小企業対策予算を1兆円程度に増やす
●派遣やパート労働と正社員との均等待遇ルールを確立。若者の雇用対策予算を大幅に増やす
●大企業の法人税率などを見直して8兆円を確保し教育、中小企業振興に
<社民>
●最低2年間の名目経済成長2%達成後、10年間を目安に財政再建
●ベンチャー企業、地場産業、女性の起業に積極的に融資
●福祉、環境、教育など暮らし・地域に根付いた200万人規模の雇用創出
●飲食料品にかかる消費税額戻し金制度を導入
●消費者保護を最優先する金融サービス法を制定
(表)小泉政権下での名目GDPと完全失業率の推移
 最近の景気回復基調には二つ特徴がある。一つは「民需主導」。企業は債務、人員、設備という「三つの過剰」を抱えていたが、リストラが実を結び脱却しつつある。さらに商品開発といった自助努力による成果が出てきた。

 もう一つは「外需」で、製造業などが米国、中国の成長に伴い輸出を拡大した。政府は「小泉改革」の成果と強調しているが、必ずしもそうとは言えない。

 問題は景気回復が本格的ではないこと。「大企業と中小企業の格差」が広がっている。大企業は好調だが、中小企業は依然、三つの過剰を抱えたままだ。大企業には製造業、中小には非製造業が多いから、製造業と非製造業の格差でもある。

 中央と地方の格差が言われるが、実際には地方の中で二極化が進んでいる。愛知県など製造業の強い地域と、製造業の弱い北海道や四国などだ。

 個人消費の本格的回復に時間がかかること、道路公団民営化などの改革が中途半端に終わる可能性があることなども懸念される。各党はこうした問題への取り組みを公約に掲げるべきだが、必ずしも具体的ではない。

 まず、いかに民需を本格的なものにするかだ。非製造業を育てることが地域再生や雇用拡大にもつながる。介護・医療・福祉・農業など、ニーズがますます増える分野にどう対応し、新しいビジネスにつなげるか。各党それなりに触れているが不十分。自民党は、規制緩和や税制改革をもっと具体的に示すべきだ。

 もう一つは公的部門の改革だ。行政改革による効率化をもっと進め、族議員など既得権益に切り込まねばならない。民主党は各分野で歳出削減を掲げているが、税収がどれだけ増えてデフレ脱却がいつになるのかなど、経済の全体像を示していない。公明党は公共サービスの給付について十分示しているが、負担がどれぐらいになるのか説明が足りない。

 本来の争点として公的部門がどの範囲までまかなうのか、行政サービスはどれぐらい必要で、そのために国民はどれほど負担するか、という政府の役割が問われねばならない。米国型の「小さい政府」にするか、北欧型の「大きな政府」にするのか。各党は「国のかたち」を示す必要がある。
 たかはし・すすむ 住友銀行に入行後、日本総合研究所調査研究員に。同調査部長などを経て現職。早稲田大学大学院客員教授。51歳。