2004参院選
審判 政治不信
<4> 自衛隊イラク派遣
 道内で… 元防衛族、明快に「違憲」
 「今度は多国籍軍に参加するという。小泉さん一人で決められるのですか。そんな権限がどこにあるのですか」

 自衛隊イラク派遣の差し止め訴訟を起こした元郵政相の箕輪登さん(80)=小樽在住=は十四日、札幌地裁で証言台に立った。いすには腰掛けず、三十分近く熱弁を振るった。

 イラクで日本人三人の人質事件が起きた四月中旬、箕輪さんは人質の身代わりになろうと決意。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラに出演するため、妻イネさん(76)と二人分の渡航資金を準備した。

 犯人側の要求は一つ。自衛隊の撤退だ。「私は首相を相手に自衛隊撤退の裁判を起こしている。犯人とは“同志”。そう呼びかければ分かってくれると思った」

 自民党衆院議員時代、防衛政務次官や自民党国防部会副部会長を歴任。防衛族として知られたが、「海外へ武器を持ち出すのは憲法や自衛隊法に違反する」と明快だ。

 箕輪さんが決心して間もなく、人質は無事解放された。しかし、事件後に論議を呼んだのは三人の行動を問う「自己責任」論。自衛隊派遣の是非はかすんでしまった。

 高遠菜穂子さん(34)ら人質の家族に付き添った北海学園大法学部の本田宏助教授は「その後、フリージャーナリスト二人が命を落としたが、政府は一言も自己責任論を持ち出さない。自己責任論は結局、自衛隊派遣を守るための世論対策だった」と指摘する。

 「非戦闘地域」の要件が崩れつつあるサマワに、今も道内から隊員が派遣されている。その隊員の父親(70)は言う。

 「米国の言いなりになって政府は莫大(ばくだい)な金を使い、多くの隊員を送った。でも、命の危険を冒してまでのことを、自衛隊は現地でしているのだろうか」(小野孝子)
 
 永田町で… 真正面から向き合わず
 九日未明、国連安全保障理事会で採択されたイラク主権移譲に関する「決議一五四六」。政府は、この決議に関して早くから米側にこう要請していた。「多国籍軍の任務に人道復興支援を入れてほしい」

 小泉首相は、人道復興支援を大義に自衛隊をイラクに派遣した。国連のお墨付きが得られれば、イラク特措法の下でも、多国籍軍参加の体裁が整う。日米同盟の強化を目指す首相が、この間、「参加ありき」で調整してきたのは明白だった。

 しかし、首相は、参加の正式表明を十日の主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)閉幕の記者会見まで引き延ばした。「早く表明すれば、参院選前に国会で野党側に追及される」(政府関係者)からだ。

 首相による国会説明は通常国会閉会直前の十四日。他国の武力行使との一体化など憲法に抵触する可能性をはらむにもかかわらず、論戦は時間不足で不完全燃焼に終わった。

 「小泉さんは議論しないで国会を通す名人だ」。首相のかつての盟友、自民党の加藤紘一元幹事長はこう皮肉った。

 ただ、野党の民主党も党内に賛否両論を抱え、「深追いすれば、参院選前に足並みの乱れが露呈しかねない」(幹部)という党内事情がある。

 党利党略優先の姿勢ばかりが目立つ与野党。永田町では、自衛隊イラク派遣に真正面から向き合う空気は希薄だ。(則本晃)