インサイド総選挙

11区 十勝管内 推薦状にひそむ打算
 十七年余に及んだ「骨肉の争い」に終止符を打つセレモニーにしては、あまりに寒々とした光景だった。

 八日午後、自民前職で元農水相中川昭一の帯広選対事務所。旧5区時代に、保守票を激しく奪い合った自民党総務局長鈴木宗男の十勝総連合後援会から中川に、初めて推薦状が手渡された。だが、双方の後援会幹部は握手こそしたものの、会話を弾ませることはなかった。

 「できるだけの協力はします」。鈴木側の十勝総連合後援会長、石田富男のあいさつは型通りのものだった。

 ともに六選を狙う、中川と鈴木。かつて自民党総裁選に出馬後、自ら命を絶った故中川一郎の後継をめぐり、長男と腹心の秘書は、旧5区を舞台に長く因縁の対立を続けてきた。小選挙区制が導入された前回の衆院選から、鈴木は13区(釧路、根室管内)に「国替え」。中川との直接対決はなくなったが、11区(十勝管内)ではなお各級選挙で両派の直系候補が激突を繰り返す。

 「向こうから(推薦の)あいさつに来たからね」。鈴木後援会幹部は、初の推薦状のきっかけをこう明かす。鈴木本人は党道連会長と同時に全国の選挙対策の責任者でもある。「今回は鈴木先生の立場もあるし、本人も『問題なし』の返事だった」

 一方、中川陣営幹部は「これで二つの後援会が同じ行動が取れる。この意味は非常に重い」と、雪解けの一歩を強調する。前回衆院選で、中川の得票は民主党候補を三万票上回る九万七千票だった。十万票の大台を狙う中川陣営にとって、十勝でいまなお三万票ともいわれる鈴木票の取り込みは不可欠だ。

 だが鈴木後援会の動きは鈍い。応援で奮闘が目立つのは、鈴木側近の直系道議、喜多龍一だけ。喜多は中川選対に入り、道議選で激しく首位争いをした大谷亨と町村部の遊説に回るが、鈴木後援会が組織的に動き出す気配は感じられない。熱烈な鈴木支持者からは「今回は中川を押すが、次回の選挙は別問題」との声も。

 中川後援会幹部は「将来も協力をお願いしたいが、これ以上虫のいいことは申し上げられない」と言葉を濁す。

 13区に転出した鈴木は今回、比例代表への出馬だが、次回はコスタリカ方式で北村直人と小選挙区を入れ替わる。「中川に恩を売り、次の選挙で13区に残る中川票を回収するのが目当て」。中川推薦劇をめぐっては、そんな憶測も舞台裏ではささやかれる。

 和解の象徴とも見える一枚の推薦状−。だが、鈴木派幹部はこう漏らす。「しょせん、中川、鈴木の支持者は、同じコップの中に混じり合うことはできない」

(敬称略)



北海道新聞
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