インサイド総選挙

9区 胆振、日高管内 牙城揺さぶる「七社会」
 「この地域が落ち込んだままでいいのか。期待に沿う結果が出なければ、選手交代だ」。衆院選公示直前の今月八日、自民党新人・岩倉博文が室蘭で開いた総決起集会。室蘭後援会長の郷農雅之(日鉄セメント社長)は不況に沈む地域の実情を訴え、岩倉支持を呼び掛けた。

 室蘭は民主党代表鳩山由紀夫が過去四回の選挙で圧倒的な得票率を誇ってきた拠点。岩倉は苫小牧を足場に、鳩山の牙城(がじょう)を脅かす。

 岩倉は公共事業を求める建設業界を突破口に室蘭に侵食。五月下旬に旗揚げした室蘭後援会には新日鉄、日本製鋼所、日鉄セメントなど「七社会」と呼ばれ、長く地元政治に影響を及ぼし鳩山を支援し続けてきた大手企業の幹部らが名前を連ねた。

 「えっ、この顔ぶれは…」。名簿を入手した鳩山陣営幹部らは絶句したが、後の祭り。「七社会」のある企業幹部は「うちの売り上げの半分は公共事業関連。ここ何年かは地元に与党代議士がおらず、苦しい思いをしてきた。今回は、初めて関連会社もあげて後援会の名簿づくりに奔走した」と明かす。

 もっとも、道内一といわれた企業城下町も時代とともに変質。「七社会」の力に疑問を投げ掛ける声は、地元に少なくない。

 「理想ばかりでは景気はよくならない。今回は岩倉だ」。新日鉄の下請け会社がこういって社内に岩倉のポスターを掲げたかと思えば、一方では、「岩倉後援会の要請で管理職を何人か動員したが、はっきり言って“おつき合い”。どちらも応援しない」と言い切る中小企業も。本業同様、選挙でも、下請けの“親離れ”は進んでいる。

 「七社会」内部にも、いまなお岩倉、鳩山両後援会に加入したり、鳩山の決起集会に出席した関係者のいることが、「七社会は本気なのか」という疑心暗鬼にもつながっている。

 郷農は「(企業内候補を抱える)市議選に比べて取り組みが足りないという見方はあるかもしれない」としつつも、「各社で意思統一している。やるからには勝つ」と語気を強める。ただ、七社会を味方につけた自民党の積極攻勢に、鳩山陣営からは「反発が生まれるはず」と、強気とも余裕ともつかない声が聞こえてくる。

 「七社会」を震源にした室蘭の政治の“激震”。票田のマグマがどの程度動いているのかが、まだ見えない。

(敬称略)



北海道新聞
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