インサイド総選挙

9区 胆振、日高管内 自民・鈴木VS民主・鳩山

仁義なき両雄“対決” 公共事業で駆け引き
 「九州からも沖縄からも(応援要請の)声が掛かっているが、この選挙区から奇跡を起こそうとお邪魔した」。二十二日午前八時、太平洋岸に近い北電厚真発電所(胆振管内厚真町)前で始まった自民党新人岩倉博文の街頭演説。党総務局長として全国の選挙戦を仕切る鈴木宗男(比例代表道ブロック一位)が声を振り絞った。作業員や工事関係者らに交じって、そこには北電会長泉誠二(道経連会長)も姿を見せた。

 鈴木が岩倉の応援に駆けつけるのは公示後二度目。この四カ月間で実に十五回近くに及ぶ。

 岩倉は終盤情勢で民主党代表鳩山由紀夫にぴたりと肉薄。ここにきて自民党サイドは「大金星も夢ではない」と野党第一党党首の追い落としを本気で視野に入れ始めた。党道連会長でもある鈴木のテコ入れは苛烈(かれつ)を極める。それを象徴するのが、泉の9区入りだった。

 前日の朝、同党道連は札幌市内のホテルに企業・団体の代表約百三十人を集め、応援を要請。その際、鈴木は泉を名指しで「エネルギー政策は自民党がやっている。選挙は労使一体でお願いしたい」と迫った。民主党の有力支持母体である旧同盟系の北電労組への露骨なけん制で、岩倉選対関係者は「会長自身が発電所まで足を運ぶ異例の対応が、組合員への無言の圧力になったはず」とほくそ笑む。

 鈴木はこの後、岩倉とともに苫小牧市内の企業を行脚。昼前の街頭演説では「地域の全権を担う小選挙区の代表が、公共事業はいらない、予算案には反対と言う野党の政治家では、北海道の失業率はさらに上がる」と鳩山を真っ向から批判し、目先の不況にあえぐ有権者心理に訴えた。

 鈴木が9区を駆けめぐった同じ時間帯−。これまで党首として全国遊説に飛び回ってきた鳩山も公示後初めて地元入りし、苫小牧から室蘭までを企業回り、街頭演説、記者会見にと奔走した。

 「典型的な利益誘導型」と揶揄(やゆ)される鈴木の選挙手法に対し「こんな古い、どう喝まがいの選挙に負けるわけにはいかない。信念と覚悟の勝負だ」と激しい闘争心を燃やし、「北海道も公共事業に一方的に依存してばかりでは、大きく景気が回復するはずもない」と経済構造改革の必要性を連呼。鳩山周辺は「公共事業で自民党の揺さぶりも気にせず、あえて持論を展開するのが鳩山らしさ。どちらが正しいか有権者は分かっている」と自らに言い聞かせる。

 だが、自民党の猛烈な攻勢への危機感もあって、陣営は鳩山の訴える理想とは別の顔も水面下でのぞかせる。

 苫小牧市内ではここ数日、民主党の支持母体である市職労出身の市長、鳥越忠行が「市役所幹部や市議を使って土建を中心とした業者に鳩山支持の締め付けを始めている」との情報が一斉に流れた。苫小牧の民主党幹部はこれを否定しない。「向こうが権力をかさに着るなら、こちらも市政を預かる立場。鳩山さんの考えには反するが、背に腹は代えられない」

 岩倉支援に回った業者には、同党関係者が「あなたは鈴木に食わせてもらうつもりなんですね」と踏み絵を突き付ける場面も。鳩山陣営幹部は「あるマチでは、民主党系道議が『道の仕事は必ず回す』と業者に訴え、鳩山支援を取り付けた」と明かす。

 こうした動きに、岩倉陣営も敏感に反応する。苫小牧市内での街頭演説の最後に鈴木は鳥越の動きを「自分たちの権力をほしいままに、弱い業者をいじめるようなことがあってはならない」と非難した。鳩山陣営も「こちらの切り札を相手に意識させただけでも成功」とひるむ気配はない。

 投票日まで残り二日。9区を舞台に繰り広げられる野党第一党の党首と自民党の威信をかけた攻防は、仁義なき戦いの様相を帯びてきた。

(敬称略)



北海道新聞
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