2004/08/18(水)
医療費、5年で約2億円減少   村上 智彦
  私がここ桧山管内瀬棚町で地域医療に取り組んで、六年目に入りました。今回は、この五年間の変化と感想をまとめてみたいと思います。

 着任して最初に驚いた事は、この町の老人医療費の高さです。一九八九年ごろ全国一となり、その後数年間は道内でも一位を続けていました。医療過疎と高額医療が同居していたこの町で、真っ先に取り組まなくてはならないと思ったのは、医療費を減らすことでした。

 さしあたっての目標は二つありました。一つはむだな検査や薬を止めて普通の医療をすること、もう一つは保健活動や予防医学を推進して病気自体を減らすことです。

 日々の診療だけでなく、ふだん医療機関に来ない人たちも対象にした健康講話会、健康教室などを保健師さんたちと協力して開くほか、町内の各地域に年間三十回以上出かけていって病気の知識や予防についての話をしたり、町の広報を用いて情報提供をしたりしてきました。また、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを公費助成にして接種率を上げたり、ピロリ菌の尿中抗体検査を町の検診に取り入れたりもしてきました。

 病院がはやって大もうけしていている町が、住みやすい町だとは言えません。病人や重症者が少なければ国保税が安くなり、窓口での支払いも少なくなり、地域の労働力も維持できるというメリットがあります。病人や重症者が多くては、いくら黒字でも公的医療機関をつくる意味がないと思っていました。

 さて、八九年度に全国一だった瀬棚町の老人医療費は、二○○三年度には八百十八位にまで下がっていました。北海道内でも百八十七位となりました。額にすると、この五年間で二億円ぐらい減った計算になります。もちろん、保健師さんや住民の皆さんの協力があって達成できた結果ですが、これを地域活動による収益と見なすと、医療機関が赤字でもじゅうぶん元が取れていると考えています。

 地域の公的病院や診療所というと、赤字か黒字かということしか話題になりませんが、病人の数や医療費がどうなっているのかということのほうが、私には大切に思えます。住民の中で病院に通っている人たちは一部であり、ほとんどの人は生活習慣の見直しなどで病気にならない工夫ができるはずです。今後も、地域で保健活動や予防医学を推進していきたいと考えています。

(荻野吟子記念瀬棚町医療センター所長=桧山管内)