28歳 NEC−白樺高出 出遅れた王者 連覇なるか
ようやく自分のスタイルで滑れる 「清水は、どうなってるんだ」−。昨季までの破格の強さを知る人は、だれもがそう思うだろう。突然の腰痛に見舞われた王者にとって、五輪連覇への最大のテーマは“我慢”。
腰を痛めたのは昨年10月、シーズンイン直前の練習中だった。開幕戦の全日本距離別選手権を欠場。故障が完治しないまま、ワールドカップ(W杯)に出場したが、腰に過度な負担はかけられない。4レースのタイムはいずれも、自らが持つ500メートルの世界記録(34秒32)に遠く及ばなかった。 清水にとって、500メートルはスタートからの100メートルが勝敗のすべてを握る。以前、日本代表の長田照正ヘッドコーチは「清水が100メートルでコンマ2秒離したら、絶対負けることがない」と解説した。あのロケットスタートが盤石なら、金メダルも安泰のはずだった。 いつ、沈み込むような前傾姿勢で清水が飛び出すのか。12月末の全日本スプリントで、その兆候が表れた。「スタートから10メートルぐらい初めてMAXで滑った。これでようやく自分のスタイルでレースができる」。レース中のとげとげしさが消え、穏やかな表情が印象深かった。 シーズン前、「五輪は8割の力でも勝てる状態でいきたい」と語った。レースで100%の力を必ず出せるとは限らないからだ。清水ですら、そんな余裕を欲しがる。五輪で勝つとは、それほど困難なものなのだろう。 ライバル、ジェレミー・ウォザースプーン(カナダ)、そして、親友の武田豊樹(SHI、釧緑岡高出)も侮れない。鉄壁だった金メダル候補の出遅れで、勝負は格段におもしろくなった。それでも、勝つのは清水と目されるのは、なぜか。大舞台でこそ真価を発揮する勝負師が漂わせてきた、絶大な信頼感にほかならない。 (酒井信太郎) |