聖火その光と影
迷彩服に緊迫する街 テロ封じへ米国の威信
最高の技 純粋な感動「こんな時だからこそ」
5度目につかんだ祭典 街の激変に戸惑いも
メーン・メディア・センター内で、爆発物検知犬を連れて警備に当たる州兵。ボランティアと時折、言葉を交わす(守屋裕之撮影)
 銃を持った迷彩服の州兵が街をかっ歩する。カメラを向けてみる。「おい、撮るな!」。途端に州兵は険しい表情になった。米ユタ州ソルトレークシティー。冬季五輪開幕を八日(日本時間九日)に控え、街は緊迫した空気に包まれている。

 高さ約二メートルの金網フェンスが各競技場をびっしり囲む。主なビルの入り口には金属探知機。空には軍のヘリが飛び交う。昨年九月の米中枢同時テロを契機に高まった“五輪テロ”への不安を払しょくするため、警備は厳重になる一方だ。そこには開催国であり、世界随一の超大国の“威信”が見え隠れする。

 治安対策費は一九九六年アトランタ五輪の三倍にあたる三億一千万ドル(約四百十億円)。州兵や警察を含めた警備要員は一万五千人を超える。アイスホッケー会場では入場者の顔をスキャンして犯罪者リストと照合する監視カメラを設置。爆発物検知犬を導入し、炭疽(たんそ)菌治療薬も大量に購入した。開、閉会式時はソルトレークシティー国際空港が閉鎖され、大会期間中は競技会場周辺の上空約七十キロ四方を全面飛行禁止にするほどの徹底ぶりだ。

 「開会式会場は地球上で最も安全な場所になるだろう」。ソルトレークシティー五輪組織委(SLOC)のミット・ロムニー会長は三日の会見で大会の安全を重ねて強調した。安全対策を統括するユタ州五輪公共安全司令部の幹部は「私の妻も息子も組織委で働いている。甥(おい)はこれからソルトレークに来る。懸念があれば呼ぶわけがないでしょう」。家族を引き合いに、大会の無事終了に自信を示した。

 厳戒態勢は市民生活をも犠牲にするが、おおむね市民はこの処置に寛容だ。「そりゃ、不便もあるわ。でも、セキュリティーが万全であることが一番大切なの。我慢しなきゃ」。市内に住む主婦ジェーン・ターナーさん(50)はファストフード店で、ジュースを飲みながらさらりと言った。

 地元のテレビや新聞は連日のように、五輪の警備状況を伝える。その情報から国や州の安全対策を把握し、冷静に評価しているのだという。「五輪を無事に終わらせれば、アメリカが安全な国であることを世界に知らせられる。それがアメリカ国民の希望なの」

 米国各地を巡った聖火は七日、いよいよソルトレークシティーに入る。


 二十一世紀最初の五輪開幕まであと二日。招致スキャンダル、米中枢同時テロ…。さまざまな難題を乗り越えて開かれる「スポーツと平和の祭典」に、大会関係者は、市民は、選手は、いま何を思うのか。舞台が整った街から報告する。(鷲見浩二)

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