感染源究明遅れる 酪農家「安心ほど遠い」 |
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「まさか、BSEでは…」。釧路管内標茶町の酪農家村上善夫さん(55)は、朝晩牛舎を見回って様子のおかしい牛がいると、不安で居ても立ってもいられなくなり獣医師を呼ぶ。8月にも脚のふらつく牛が出たが、カルシウム不足が原因と分かり胸をなでおろした。 感染牛発見のニュースが流れた時、「酪農を続けられるだろうか」と妻と真剣に話し合った。あれから1年。経営への打撃は予想したほどではなく、当時のような絶望感は薄れた。 だが、感染牛が出れば飼育している130頭の乳牛の8、9割を疑似患畜として殺処分しなくてはならない。新しく牛を導入する際の国や道の支援制度ができたとはいえ、牧場経営を一から立て直すには困難が伴う。 BSEの検査体制が整ったことで感染牛の肉が市場に出回らなくなり、牛肉消費は発見前の水準に戻った。だが、生産者からは「安心するにはほど遠い」という声が漏れる。 釧路管内のある酪農家は、国内4頭目の感染牛が見つかった2002年5月、地元農協から「感染リスクの高い廃用牛(搾乳の役割を終えた高齢の乳牛)は病畜や死亡牛として処理してほしい」と頼まれた。肉用として出荷すればBSE検査の対象となるが、病畜や死亡牛なら対象外だ。「地元から感染牛が出ないようにするため」と関係者は話す。 国の責任を追及するため道内の酪農家ら約80人で結成した「BSE損害補償を求める会」の米田俊之代表委員は、「感染原因が肉骨粉か代用乳なのかもはっきりしない。これでは感染牛発生の危険性を抱え続けることになる」と国による原因究明の遅れを非難する。 廃用牛の価格低迷も酪農経営に影を落としている。8月の廃用牛1頭当たりの平均価格は約2万6000円で、国の廃用牛買い上げ制度を利用しても最大4万円にしかならない。発生前に10万円以上した価格にはほど遠い。 感染牛が見つかった3軒の道内酪農家のうち営農を続けているのは1軒だけだ。取引価格低迷で数1000万円の損害を被った肉牛肥育農家もある。標茶町の酪農家東海林一行さん(54)は「国の制度は本当の補償になっていない」と不満を募らせる。 一方で、上川管内下川町の元酪農家のルポライター滝川康治さん(48)は「乳量を上げるなど生産性向上に偏ったために牛が本来口にしない動物性飼料を与え、結果としてBSEを招いた。牧草などを主体とした昔の酪農法を再評価するべきだ」と指摘。酪農家の側にもBSE発症を招いた効率一辺倒の経営を見直す機運が出ている。 標茶の村上さんや東海林さんは「感染牛を恐れず、徹底的に原因究明をしなくてはだめだ」と冷静に話し合えるようになったという。大きな災いを克服して新たな出発ができるのか。本当の試練は始まったばかりだ。 BSE発見から1年の経緯
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