コスト転嫁 課題に 個体履歴 膨らむ管理費 |
![]() |
空が白み始めた早朝、札幌市の生活協同組合コープさっぽろの生鮮加工センターで作業員が牛肉の塊を切り、手際よくパックに詰めていた。パックはベルトコンベヤーを流れ、機械で商品名や加工日を印字した表示ラベルが張り付けられる。 「国のトレーサビリティー・システム(生産履歴を追跡する仕組み)が導入されれば、加工する肉のブロックが替わるたびに流れ作業を中断してラベルの表示設定を変えなければならない。どう対応すればいいのか」。佐々木嗣礼センター長は戸惑いの表情を見せた。 牛海綿状脳症(BSE)問題を契機に、国は消費者重視の食品行政に転換するため、牛肉の生産過程をたどることができるトレーサビリティー・システムの導入を打ち出した。すべての牛に個体識別番号を入れた「耳標」を付け、その番号で肉の流通を管理する仕組みで、商品に番号と産地などを表示して消費者に牛の履歴情報を伝える。
「誰が経費負担するかも大きな問題」と、帯広市の食肉卸「佐々木畜産」の佐々木一司社長は指摘する。飼料や治療歴といったきめ細かい情報まで消費者に届けるとなれば、情報管理の経費が膨らみ、価格への転嫁が避けられなくなるからだ。同社長は「安全はただでは買えないという認識も必要」と、消費者の意識改革もシステムづくりの重要なカギとみる。 国はこの1年、さまざまなBSE対策を行ってきた。2001年10月に始めた食肉に回る牛のBSE全頭検査では、8月末までに約100万頭を検査。1頭目以外の感染牛4頭はすべてこの検査で発見され、成果を挙げた。厚生労働省は2003年度にも約40億円を予算要求した。 その一方で、来春実施を目指す、食肉対象とならない病気やけがで死んだ24カ月齢以上の牛の全頭検査は、各自治体の準備が遅れている。 肉用牛の検査は、と畜場の解体処理工程に脳の検査をするラインを加えただけでできたが、死亡牛の場合はと畜場で処理できないため新たな検査施設が必要。道内では全国の半分以上の年間約4万頭の死亡牛が見込まれ、道は4−6カ所の検査施設建設を考えている。 さらに、検査を実施するには獣医師と検査補助員合わせて約130人の新規採用が必要。道の担当者は「本州の自治体や民間と人材を奪い合う状況で、予定の人数を確保できるかどうか分からない」と懸念。道は実施時期を1年延期して2004年春の検査開始を目指すが、国の補助が施設整備費の2分の1にとどまることもあり、今も検討段階で足踏みしたままだ。 「北海道食の自給ネットワーク」の大熊久美子事務局長は「死亡牛全頭検査は、国が責任を持ってやるべきこと。同時に本来あるべき生産の姿を根本から問い直す政策も必要」と一層の改革を求めている。 |