調査に手詰まり感 死亡牛検査 体制整わず |
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神奈川県伊勢原市で国内5頭目の牛海綿状脳症(BSE)感染牛が見つかった2002年8月22日、飼料メーカー・科学飼料研究所(本社・東京)の江藤忠文業務部長は、インターネットでニュースを知り、重苦しい気分になった。 「また、うちの代用乳を飲んでいた牛なのでは…」 代用乳は、母牛の初乳を飲む生後1週間を過ぎてから、子牛に与えられる粉ミルク。それまで感染が確認された四頭には、いずれも同社の高崎工場で製造された代用乳が与えられていた。 そして5頭目。この牛も同工場で作られた代用乳を飲んでいたことが判明した。 同工場製の代用乳のシェアは、5頭の感染牛が見つかった東日本では30−40%。江藤部長は「5頭の共通点というだけで、代用乳が感染源と受け取られるのは困る。一刻も早く原因の究明を」と訴える。
この代用乳は、BSE発生国であるオランダ産の動物性油脂を原料にしていた。しかし、農水省が工場を詳しく調べた結果、BSEの病原体が蓄積されたタンパク質が混入する可能性は、極めて低いことが分かった。 1998年6月以前に輸入されたイタリアの肉骨粉の加熱処理が不十分だったことや、国内の飼料工場の一部で牛用の飼料に肉骨粉が混入した疑いがあることも明らかになったが、いずれも「可能性」の域を出ていない。 農水省は、感染牛が生まれた1年前にさかのぼり、1995年以降の肉骨粉の輸入・流通経路を重点的に調べている。だが、国内外とも企業や工場の関係書類が完全には残っておらず、関係者への聞き取り程度しかできないのが実状。5頭の共通点から感染源を探る作業は厳しい状況にある。 BSEに詳しい山内一也東大名誉教授は「病気などで死んで処理された牛の中にも感染牛がいる可能性があり、早急に検査すべきだ」と早くから指摘してきた。BSEの原因究明を進めている欧州では、死亡牛にBSE感染が見つかる確率が、食肉処理される牛の20−30倍にも及んだとのデータがあるからだ。 だが、必要な施設や人員が確保できず、実際に死亡牛の検査が始まるのは来春から。しかも、検査体制が整わない道内など一部の地域では、さらに遅れる見通しだ。 「迷宮入りはさせない。日本が、世界で最初に感染経路を特定した国になるよう努力する」と意気込む武部勤農水相だが、農水省の内部では「新しい手がかりが見つからない限り、調査は先へ進まない」(幹部)と早くも“長期戦”を覚悟する声がもれ出している。 |