制度 抜け穴だらけ 「業界に甘い行政」根深く |
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「やっと表に出たか」 国による牛海綿状脳症(BSE)対策の牛肉買い取り事業に乗じた牛肉の偽装が、業界トップの日本ハムグループでも行われていたことが分かった2002年8月6日、加毛修弁護士(東京)は、淡々とした表情でつぶやいた。 加毛氏は、同じ手法の牛肉偽装が発覚して4月に会社解散へ追い込まれた雪印食品の社内調査委員会で委員長を務め、複数の社員から「あそこも偽装している」と、日本ハムを含めて5社を超える有力企業の実名を耳にしていたからだ。ある1社については「愛知県の業者から売れない牛肉800キロを買いたたいて申請した」との具体的な証言まであった。 買い取り事業の対象は、出荷される牛のBSE全頭検査が始まった2001年10月18日より前に食肉処理された国産牛肉。消費者の不安解消のため、在庫牛肉約1万3000トンを市場から隔離することが目的だった。食肉は危険部位ではないので、農水省は一時保管した後で市場へ戻すことを検討していたが「焼却処分しないと消費者の不安は消えない」という自民党農林族などの“圧力”で焼却処分費が加わり、事業予算は当初計画の92億円から293億円へ一気に膨らんだ。
「申請で購入先や食肉処理の日付の記入を義務付けておけば、偽装もある程度はチェックできたはず。抜け穴だらけの『おいしい』事業」(食肉業界関係者)との指摘もあるが、農水省がそうした策を検討した形跡はない。武部勤農水相は「制度が不備だったとの批判は甘んじて受けるが、当時は与野党も消費者も買い取りを求めていた」と説明するばかりだ。 農水、厚生労働両省のBSE調査検討委員会が4月にまとめた報告書は、農水省が1996年4月に世界保健機関(WHO)から肉骨粉禁止の勧告を受けながら、法的措置ではなく行政指導にとどめたことを「重大な失政」と指摘。同省の「危機意識の欠如と危機管理能力の欠落」を断罪したが、買い取り事業でも同じ構図が繰り返された。消費者軽視、業界重視−の姿勢が、結果的に業界を混乱に陥れた点でも共通している。 農水省は9月中に、業界寄りと批判されてきた行政のあり方を含めて食肉業界への対応を検証する第三者機関を設ける。帝国データバンクの調べでは、BSE関連の倒産は2001年10月から2002年6月までの9カ月間で64件、負債総額は390億円に上った。その大半は中小・零細の食肉販売店や焼き肉店。雪印食品の事件では、まじめに働いてきた多くの社員が職場を失った。行政のあり方の検証は欠かせないが、こうした人たちの職場はもう戻らない。 |