あなた見られてます 監視と安全のはざまで

第1部 カメラ
<1> 増殖する眼
<2> 技術革新
<3> 労務管理
<4> Nシステム
<5> 防犯タウン

「あなた見られてます」
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2005/04/23(土) 朝刊
<4> Nシステム  素行調査利用は「常識」
全国の主要幹線道路に設置されているNシステム。複数のカメラが全車両のナンバーを記録する=石狩市新港南の国道231号
 札幌の中心街から石狩街道を経由して国道231号に入り、石狩市新港南に差し掛かると、「凹」型を逆さまにした鉄製構造物が目に入る。四車線をまたぐ巨大な構造物の上部には片側六台、計十二台の箱形カメラが横に並び、車道を見下す。速度違反を取り締まる「オービス」と間違え、思わずブレーキを踏んだ人も少なくないはずだ。

 自動車ナンバー自動読み取り装置、通称「Nシステム」である。警察は一九八六年から、犯罪捜査を名目に全国各地の高速道路や主要幹線道路に設置を開始。すべての通過車両のナンバーを記録しているが、設置場所は一切公表していない。

 「オウム真理教の事件が起きた九五年度に全国で急増しました。道内の設置も、この年からです」

 東京の交通ジャーナリスト浜島望さんは、全国を歩き、Nシステムの設置状況を調べている。道内へも幾度か足を運び、「一覧表」も作った。

 浜島さんによると、全国では八百カ所以上。道内では高速道路が道央道と札樽道、国道が5、12、36号など計二十カ所に上り、札幌や旭川など主要都市に出入りする幹線を監視下に置く。

運用は闇の中

 警察庁によると、仕組みはこうだ。

 カメラで車両前部のナンバープレートを撮影し、その文字情報を各都道府県警の専用コンピューターに蓄積。手配車両の通過を瞬時に感知するほか、通過履歴の検索もできる。情報は全国の警察が共有し、広域事件の捜査にも使われている−。

 だが、運用の実態は「ブラックボックス」の中にある。警察庁は「取り扱いを定めた通達は(情報開示請求されても)相当部分が非開示になる。データ保存期間も公表できない」と言い、道警も専用コンピューター室の場所すら明らかにしていない。

 Nシステムが「犯罪捜査以外」に利用されている、との傍証もある。

 群馬県警の裏金づくりについて内部で抗議していた元警部補大河原宗平さん(51)は在職中の二○○三年秋、テレビ局にひそかに実情を連絡し、その前後から車の移動を監視されたという。「警察官の素行調査でNシステムを使うのは常識。監視は怖い。本当に怖かった」。大河原氏は恐怖に耐えかねてナンバーを読み取れないように細工。結局、その行為が法律違反だとして逮捕された。

 新潟では、県警幹部の行動を県警側がNシステムで監視していた、と報道されたこともある。

 数年前に野党政治家のスキャンダルが表面化した際、永田町では「きっかけはNだ」と言われ、特定政治家の動静把握に利用されているのではないか、との指摘も出た。

 そして、道警の元幹部は「(監視したい人の)監視に使うのは常識」と言い切る。

顔写真撮影?

 東京の桜井光政弁護士は「Nシステムは干渉されずに移動する自由や肖像権を侵害している」として、集団で損害賠償訴訟を起こした経験を持つ。前部に座る人の顔写真を撮影している疑いもあると主張した。

 これに対し警察側はNシステムの効果を説いた警察論文以外は証拠を提出せず、情報秘匿を徹底。訴訟は最高裁まで争われ、原告敗訴で終わった。

 それでも桜井さんの疑念は消えない。

 「道警の裏金づくりが示すように、単に『ちゃんと使ってます』と言われて信じられますか。Nシステムと街頭カメラを一元管理すれば、『自分の行動を一番よく知るのは警察』という社会ができかねません」