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第3部 外からの視線
<1> 避花粉ツアー
<2> ジンギスカンブーム
<3> 北海道物産展
<4> コールセンター
<5> 台湾人観光客
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2006/03/29(水) 朝刊
<4> 台湾人観光客
「異国」身近に体験
五月の前半に総勢二千二百人もの台湾人を北海道旅行に送り込むことを計画している会社がある。
旅行会社ではない。台北市に本社を持つ生命保険会社、三商美邦人寿である。実はこの旅行は営業ノルマを達成した社員に贈られる“ご褒美”。もちろん旅費は会社持ちだ。
こうした「インセンティブツアー(報奨旅行)」は台湾企業では一般的で、中でも「北海道」は効果抜群のようだ。社員ががぜんやる気になり、その社員たちが「うちの会社は北海道に行かせてくれる!」と吹聴するので、企業の社会的ステータスも上がる。
同じ生保業界の大手、南山人寿は昨年五−六月の報奨旅行の行き先に初めて北海道を選んだところ、ノルマ達成者が五千五百人と当初見込みを二千人も上回った。
両社のツアーを請け負った蓮安旅行社(台北市)の社長、杜政泰(38)は「大手の南山人寿が『北海道効果』で売り上げを伸ばした影響は大きい。追随する企業がさらに出てきますよ」とみる。
このところ海外からの来道者が急増し、二○○四年度は前年度比45%増の四十二万人(道調べ)に。その半分の二十一万人を占めるのが台湾からの来道者である。
日本の大衆文化に夢中になる台湾人を「哈日族(ハーリーズー)」と呼ぶが、一九九五年に公開された中山美穂主演の映画「ラブレター」が台湾で大ヒットし、ロケ地の小樽に哈日族が多数訪れたことが、北海道の魅力を広めるきっかけになった。台湾国際角川書店社長の塚本進(50)によれば「その後、北海道を紹介するテレビ番組が相次いで放映され、六、七年前に北海道観光ブームに火がついた」。
◇
台湾人には「日本の中の北海道」という感覚はあまりなく、日本の他の観光地とは別格の土地と位置付ける人が多い。
「いわば手軽に行ける欧州」。そう表現するのは、旅行誌を出版するMOOK(台北市)の副編集長、李若◆。台湾の面積は北海道の半分以下とあって、広大で牧歌的な風景へのあこがれが強い。「富良野などの欧州的な田園風景や雪景色に台湾人は感動する。しかも本物の欧州の三分の一の旅費で行ける。北海道は『異国』を味わえる最も身近な土地なんです」
雪、カニ、温泉…。北海道に住む人間にはありふれたものも、台湾人の目にはそうは映らない。二月まで札幌の大学に留学していた台湾東海大四年の蘇家蓉(21)はとりわけ温泉に魅せられた。温泉自体は台湾にもあるが「台湾には人前で裸になる習慣がないのです。でも北海道では普通のこと。最初は抵抗があったが、やってみると解放感でいっぱいになった」。
雄大な自然を存分に味わいながら、台湾第二の都市・高雄(百四十七万人)を上回る大都市・札幌で「都市観光」も楽しめる。日本観光協会の台湾事務所長、市川辰雄(66)は「せっかく日本に行ったのだからブランド品や電化製品の買い物もしたいでしょう。台湾人にとって、北海道はあらゆるニーズにこたえてくれる観光地」と言う。
こうした人気を背景に、台湾の航空会社は北海道行きのチャーター便を相次ぎ就航させた。○四年十月のチャーター便乗り入れ規制の撤廃で、運航本数は急増。団体旅行が低価格化し、大手企業の報奨旅行のような巨大ツアーも実現し始めた。道内五空港にチャーター便を飛ばすエバー航空札幌支店の王嘉基(33)は「今後はリピーターが増え、道東や道北に向かう客も増える」と、さらなる活況を予測する。
年間六百三十二万人の来道観光客の中で海外からの四十二万人はまだ微々たる数字だ。それでも、パウダースノーに魅了されて後志管内倶知安町を訪れるオーストラリア人、ゴルフがお目当ての韓国人、野鳥の希少種を求めて根室を訪れる英国人ら、道民が見慣れた風景や自然の中に眠る魅力を教えてくれるのが彼らだ。その「外からの視線」を自覚することが、北海道観光の未来を開く。(文中敬称略)
(注)◆は「女へん」の右に「亘」
キーワードは国際観光地
家電、高級品にニーズ
中国語で「歓迎光臨(いらっしゃいませ)」−。優れた日本製品やブランド品の購入も旅の目的になる=ヨドバシカメラマルチメディア札幌
二○○四年度の来道観光客は六百三十二万人に上ったが、前年度と比べれば0・5%減(道調べ)。北海道の観光客数は全般的には伸び悩んでいるのが現状だ。こうした中、海外からの観光客は絶対数は少ないものの驚異的な伸び率を示しており、北海道観光にとって“救世主”といえる。
特に経済成長著しい東アジアの観光客は消費意欲も旺盛だ。彼らの「消費」に関するニーズを的確につかみ、お金を使ってもらうことは、観光のみならず北海道経済全体に寄与する。
道観光のくにづくり推進室によると、来道した団体ツアー客の出費額は、台湾人で一人当たり三万−五万円、香港人で六万−八万円が平均的な額。といっても彼らは、食料品や工芸品などの典型的な土産品だけにお金を落としているわけではない。
家電店のヨドバシカメラマルチメディア札幌には、しばしば中国人団体客の観光バスが横付けされ、客がどっと店になだれ込む。デジタルカメラや時計の人気が高く、「一万円の国産腕時計を数十個まとめ買いする客も珍しくない。こうした現象は地方都市では札幌、福岡だけ」(平野隆行店長)。
大丸札幌店では今冬、多い日で約七十件の免税申告があり、バーバリーなど高級ブランドのバッグや靴がよく売れた。札幌中心部のドラッグストア、マツモトキヨシ南一条店でも、薬や化粧品を一万円単位でまとめ買いする姿が目立つ。
日本人でも、海外旅行の目的に、ブランド品などの買い物を挙げる人は多い。香港やハワイなどの国際観光地はこうしたニーズに応えるため、日本語対応を充実させ、店舗情報を発信するなど、きめ細かな努力を怠っていない。札幌も店の集積はあるのだから、いかに海外観光客のニーズに沿った情報を発信していくかが大事になる。
雄大な自然を武器に海外からの観光客を引きつける北海道。そこに札幌を中心とした「消費」の魅力が加われば、本物の「国際観光地」に飛躍できる。
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