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| 2004/01/29(木) 朝刊 |
「県警、捜査費を虚偽請求」「組織的に裏金づくり」「監査逃れ巧妙に工作」−。昨年七月。道警の報償費疑惑が表面化する四カ月ほど前、高知新聞(高知市)の紙面には連日、こんな大見出しが躍っていた。疑惑の舞台や細部は異なるものの、記事が指し示す疑惑の構図は道警疑惑と変わりない。見出しだけを並べれば、あまりの相似に驚く読者もいるはずだ。
2カ月以上苦悩
高知県警捜査一課が会計文書を偽造するなどして、国費から支給される「捜査費」を裏金として不正流用していた−。この疑惑追及は、内部文書を入手した高知新聞のスクープで始まった。そして事実上、高知新聞以外の報道機関は積極報道を控え、同紙の「一人旅」が続いている。
「警察を敵に回していいのか。ずいぶん悩みました」。高知新聞記者で県警キャップの竹内誠氏(36)は、二カ月以上も考え抜いたという。
一部警察官が引き起こした不祥事とは訳が違う。取材によって「裏金づくりは組織ぐるみ」との確証を得ていたものの、警察組織全体を告発する記事は書いたこともない。
一方には、地元紙として代々築いてきた県警との太いパイプがあった。警察担当が長い竹内記者は、重要な捜査情報も県警幹部から電話一本で取材できる自信もある。
「不正を書けば捜査情報が取れなくなる。逆にこの記事を見送れば警察に貸しをつくれる」。その考えが何度も頭の中を行き来した。
「公安を動かす」
腹を固め、報道に着手すると、案の定、反応は熾烈(しれつ)を極めた。県警は「捜査費は適正に執行されている」との正式コメントを出す一方、会社幹部には記事を出さないよう再三要請。さらに現場の記者は「(県警のだれと連絡を取っているか)携帯電話の着信履歴を調べるぞ」「(記者を尾行するため)公安を動かす」と言われ続けた。でも書くことはやめない。
そうした中、わずかな変化も見え始めている。
県警は、職員同士の飲食代に使っていた「激励慰労費」の支出を一部中止。市民団体の告発は、高知県警に受理された。橋本大二郎高知県知事は疑惑解明に消極的で、県警も「捜査上の秘密」を理由に情報開示にもほとんど応じないが、地元のオンブズマン組織は情報公開制度を駆使し疑惑に迫ろうとしている。
情報公開制度が浸透すれば、役所情報を独占していた報道機関の特権は崩れる−。竹内記者の危機感もそこにあった。市民オンブズマン高知代表の窪光則氏は「新聞、オンブズマンそれぞれに役割がある。内部文書など記者しか入手できない」と話すが、竹内記者は違う。
「高知新聞が疑惑を無視しても、いずれは志ある人が追及したと思う。県警は疑惑追及を『雑誌レベル』と言ったが、例えば政治家や高級官僚の不正を追及し、落選や辞職に追い込んだのも、ほとんどが雑誌。お行儀がよいだけなら、新聞はいずれバカにされる」
実は、竹内記者に疑惑追及の紙面化を決断させたのは、上司の社会部長中平雅彦氏(49)だった。
酒に強い土地柄。未明まで二人で酒をあおりながら、渋り続ける竹内記者に向かって上司は、報道は古い殻を破る必要があると説き続けた。
「おまえ、裏金の情報は記者として取ったんだろう? 記者が得た情報は市民のものだ。警察と市民のどっちを向いて仕事をしてるんだ?」 |
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