北海道新聞
連載は道警報償費疑惑取材班が担当しました。
<下>挑戦 組織腐敗に切り込む
2004/01/30(金) 朝刊
 取材班が「詳しい話を聞かせてほしい」と申し入れると、七十歳前の男性は電話口でおびえたような声を出した。警察の嫌がらせが続いている、裏金づくりの事実は当時話した通りで間違いないが、これ以上の取材は勘弁してほしい、と。

 熊本県警の元警察官。一九九八年春、彼は自ら保管していた副署長時代の「裏帳簿」を基に、県警の裏金づくりを報道機関などに詳細に証言した。内容は、多数の道警現職幹部・OBらが北海道新聞に証言した内容とうり二つである。ところが裏帳簿の実物まで明らかにされたにもかかわらず、県警側は疑惑の否定を続け、熊本まで足を延ばした会計検査院の実地検査も、疑惑解明には至らなかった。

 OB組織を通じるなどして、退職後の私生活も縛る「警察一家」。熊本のこの元警察官も、おそらくは「裏切り者」としてつらい思いをさせられたに違いない。

相次ぐ不正告発

 だが、警察を取り巻く環境は大きく変わりつつある。長く「聖域」とされてきた警察内部の組織的不正に切り込み、本当の意味で信頼ある警察を取り戻そうという動きは、各地でとどまることがない。

 「県警交通機動隊が県有地である駐車場を隊員に勝手に貸し出し、徴収した利用代金は県警の会計を通さずプールし、交機隊内部で飲食費などに使っていた」−

 昨年三月、同じ九州の大分県でこんな問題が浮上した。おおいた市民オンブズマンは「県有財産の収益は会計報告すべきであり、地方自治法違反」と主張。県警側が「隊員の福利厚生を目的としたもので何ら問題はない」と突っぱねる中、不当利得の返還を求め、県監査委員に住民監査請求に踏み切った。

 「県民財産で得た金をひそかに内部で使うなら裏金と同じ」と同オンブズマンの永井敬三事務局長。監査請求は棄却されたが、永井氏は「今後も警察の監視を続ける」とひるまない。

 新潟県では、県警本部長らが関東管区警察局長への接待で違法に公費を支出したとして、新潟市民オンブズマンが二〇〇〇年三月、県監査委員に住民監査請求した。接待があったちょうどその日に、同県内で九年以上も監禁されていた女性が保護される事件が発生。請求はその特異な状況下で行われた。

 同オンブズマンの佐藤賢事務局長は「当時は県警が情報公開の実施機関になっておらず(接待費用は)私費だったとする県警側の主張を覆せなかった。監査請求は却下されたが、今なら展開は違ったかもしれない」と振り返る。

どこまで透明化

 捜査用報償費の使途をめぐり浅野史郎知事が県警と激しく対じする宮城県では、「聖域」容認は組織腐敗への道という浅野知事が「報償費が本当に現場の捜査員に渡っているのか」と繰り返し、次々と県警に情報開示を迫る。その強い姿勢を前に、ある民主党県議(56)はいまひとつ、吹っ切れない気持ちでいた。

 「報償費の使途に合理的な疑いは残ると思うが、裏金に回っている『証拠』はない。治安が悪化する中、県警の士気にかかわる論議を続けていいのだろうか」

 ただ、この県議も「聖域をつくらない」考えには共鳴するという。そして、最後に付け加えた。

 「具体的な証拠が何もない中で、宮城はここまで警察をガラス張りにした。北海道のような『内部文書』が出てきたら、おとなしかった県議会も黙っていないし、私も追及に立ちますよ」
病根を追う 全国の警察「裏金」
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道警裏金問題


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