北海道新聞
2004/03/05(金)
道警不正経理疑惑 原田氏の証言(要旨)
 道議会総務委員会で四日開かれた原田宏二氏(元道警釧路方面本部長)に対する参考人質疑の詳細は次の通り。

原田氏の冒頭発言  信頼回復へ私情抑えて
 現在の心境や行動に至ったこれまでの経過を説明したいと思う。

 私が裏金づくりに直接タッチしたのは、一九六四年四月に配置された当時の北見方面本部刑事課が最初。階級は巡査部長だった。初めて領収書や関係書類を、命じられるままに偽造した。その後、退職した九五年まで十七カ所の所属(部署)を転勤したが、何らかの形で裏金づくりに関与し、一部を受け取り、その存在を知っていた。

 最初は立場が下で関心は無かった。階級が上がり、ほぼ全ぼうを知ったが、気持ちの奥底にしまい、現場の仕事に打ち込んでいた。しかし、道警中枢の管理部門で仕事をするようになって全体を知り、こんなことをしていていいのか、自省の気持ちが強くなった。

 九〇年二月の旭川中央署長時代、道監査を受け、こんな会計処理がいつまで続くのか疑問を持った。九四年の会計検査後に私なりの行動を起こしたが、少数意見でしかなく、機は熟しておらず、何の改善をすることなく退職した。

 その後、民間会社に七年勤めたが、ある官庁(道庁)出身の方が同じような(裏金)問題で一部を返還しており、その人に「道警は組織がしっかりしていていいね」と言われたのが忘れられない。この問題は、つまり官公庁では公然の秘密である。私は(道庁裏金)問題が浮上した時、すでに退職していたが、道警に自浄能力を発揮してほしいと思っていた。

 しかし稲葉問題(道警の稲葉圭昭元警部=服役中=が在職中に覚せい剤や拳銃の密売に手を染めていた事件)があった。(稲葉元警部が所属した)銃器対策室が発足した時、私は(上司の)防犯部長で、事件に強い関心を持った。背景には協力者の運用あるいは捜査費の問題、人事管理の問題などがあると予想された。

 さらに昨年、今回の旭川中央署の問題が明るみに出た。実は、問題になっている当時の署長二人は以前、私の直属の部下だった。彼らは真相を語る立場にはない、語れないということを強く感じた。他のOBも同じ。現職はなおさらだ。彼らはどんな場所でも機会でも多分、真実を語ることはない。警察組織はそういう組織だ。

 二人が窮地に陥ったのを見かねて、同じことをした私が名乗り出て、道民に謝罪し、真実を話すべきだと判断した。

 その後、マスコミなどで私が英雄のごとく扱われることになりつつあるが、本意ではない。私はこの問題に手を染めた男であり、何の改善もせず退職した男だ。道民におわびするために、ここへ来た。私も道警に三十八年勤め、組織への愛着もある。かつての上司もいる。部下もいる。同僚もいる。マスコミに話す時も非常に大きな葛藤(かっとう)があった。

 再び話すことにより、かつて側近だった部下、お世話になった方々に再び迷惑を掛けることもあろう。しかし、これは彼らの責任ではない。私は、道警に残した過去の負の遺産を清算し、現在と将来の道警の信頼回復のため、私情を抑えて体験した事実を話したい。

 (道議会総務委員会の)委員にもお願いがある。今、現場の警察官は肩身の狭い思いをし、士気も衰えている。「もうこの組織にはいたくない」という人もいる。みな優秀な警察官だ。むろん、真相解明や上層部の責任追及も大事だ。どうか、現場で働く多くの人を忘れないでいただきたい。例えば報償費の問題でも、どうしたら現場で使いやすくなるのか、議論していただきたい。

見延順章委員長(自民・道民会議)質疑  餞別 地位上がり原資認識
道議の質問を聞きながら、どう答えるか市川守弘弁護士(右)と相談する原田宏二氏=4日午後2時
見延委員長 原田氏は道警退職から十年経過し、忘却や勘違いもあり、すべての立証は不可能だと思う。原田氏が旭川中央署長だった当時の副署長(舞良昭宏氏)は原田氏の証言を(報道機関の取材などで)否定しており、原田氏の証言は真実性を疑われても仕方ない。どのような確証があって証言したのか。

 原田氏 元副署長の言葉だが、私は彼の立場を十分理解している。二月十日(記者会見)に配布した資料は、個々具体的な事実を述べたものではなく、裏金のシステムに関する体験を述べたものだ。また、記憶を補うデータを持っている。内容を申し上げることはできないが、審議に必要なら提出することも検討したい。(二〇〇〇年度の報償費を裏金にしたとして)弟子屈署に関する住民監査請求が出されたが、それが解明されると、裏金の実態はより明らかになると思う。OBや現職から手紙をもらったが、私の証言が荒唐無稽(むけい)という抗議はない。道警からもだ。

 委員長 個人的な餞別(せんべつ)の大半が不正経理を原資としているなら許されない。

 原田氏 在任中に約二十回転勤し、最初から所属長(署長などの上司)名の餞別をもらった。最初はどこから出ている金か認識がなかった。地位が上がり、餞別を渡す立場になってから、裏金から支出されていると認識した。改善を検討したが、大勢の意見にならず、見識と力がなかったことを反省している。

 委員長 道議会対策で(接待資金が道警の)裏金という確証はあるか。

 原田氏 私が道議を接待したのは一度。一九九一年十二月だ。歳末警戒の激励と記憶する。担当者から懇願され、渋々出席した。その時、大変印象に残ることがあり、鮮明に覚えている。私のデータにも残っている。費用が正規予算で賄われたかは、分からない。

蝦名大也氏(自民・道民会議)質疑  裏金 会計部門通し上納か
 蝦名氏 退職まで裏金をつくっていたという「組織的」の根拠は。

 原田氏 各地を転勤し、ほとんどのところで必ずこの問題に関与したので組織的と判断した。

 蝦名氏 現職警察官が真実を語れないとは。

 原田氏 警察は本来、犯罪捜査をする組織。不正は間違っても外に出せない。現に私もそうだった。家族にも話していないと思う。警察は階級組織で上意下達はスムーズだが、「下意上達」は難しい。元捜査員が手紙をくれた。彼は毎月一万円か二万円のカラ領収書をつくっていた。ある機会に「犯罪捜査にもっとお金を使えば、もっと検挙率が上がる」と言うと、道警本部に呼び出され幹部から注意を受けた。手紙には注意した人の名前も書いてある。彼は次の異動で左遷され、希望を失い、早期退職した。だから、先ほどから申し上げている。これは現場の警察官の声なき声だ。

 蝦名氏 裏金づくりで直接見聞きした部分は。

 原田氏 直接関与は、最初の赴任地の北見方面本部。その後、札幌中央署刑事一課の係長になり、上司から毎月五千円から一万円の運営費をもらったが、七人の部下を賄えず、参考人旅費を流用した。当時は簡単な手続きで現金を手にできた。呼び出し簿に架空の参考人の住所氏名を書き、請求書も書き、はんこも押して会計に持って行くと現金にできた。

 蝦名氏 裏金の一部が道警本部にバックされているというが。

 原田氏 こうした話は会計職員か(自分も未経験の)副署長のどちらかしか知らない。マスコミに道警の裏金(上納)を総務課長が仕切っているとの記事があった。私も(総務課長を)体験したが全くタッチしていない。推測だが、金を扱う部門ではないか。

 蝦名氏 (旭川中央署の)署長時代は毎月、裏帳簿に決裁したか。

 原田氏 月初めに副署長が私に交際費名目で現金を帳簿にはさんで持ってくる。市販の現金出納簿のようなもので、正規(の会計書類)ではない。金額は今となっては確かめようがない。

 蝦名氏 道警本部防犯部長時代にあったという部長経費は裏金か。

 原田氏 部長経費(裏金)があったことは間違いない。各種会合だけで毎月十回以上あり、大方は二次会付きだ。個人の懐から出せる金額ではない。支払った記憶もない。例えば、防犯部で会合があると、各部各課が負担する。

 蝦名氏 日額旅費について。ピンハネは自身の経験か。

 原田氏 機動捜査隊長の時、隊員に支給される日額旅費をピンハネした。当時は超過勤務手当の支給率が非常に低い時代。予算が決まっていて、忙しければ忙しいほど、隊員の超過勤務手当が少なくなる。副隊長と相談し、不足分をカバーしようと、隊員にいろいろな形で還元した。もう一つ、当時は機動捜査隊に三十台弱の警察車両が配置されていたが、時々物損事故がある。正規手続きでの修理は時間がかかるので、事故後すぐに修理し、次の日に隊員を乗せるため一定額を修理代名目でプールしていた。

 蝦名氏 裏金の使途は署長交際費や餞別(せんべつ)、部内での懇親会、冠婚葬祭、などと言っているが。

 原田氏 当時、署長交際費は正規予算になかった。署員の結婚式も月に二、三回もあり、個人で支払えず、すべて副署長や管理官(が管理する裏金)から支出された。

 蝦名氏 裏金で組織のために使ったと思われる金の割合は。

 原田氏 部長、署長、本部長として部下から祭り上げられ、黒塗りの乗用車で送り迎えされ、私自身、われを忘れていたと反省している。(裏金が)税金との認識すらほとんどなかった。これが真実だ。交際費名目で受け取っていた金の使途なら話せる。この金は生活に使おうと何に使おうと自由。財布に入れば金に公私の区別はない。例えば当時、ゴルフをよくやったが、受け取った交際費から払っていた。来る後輩、夜討ちの記者と飲む酒代などにも使った。

 蝦名氏 業務で使う裏金はどの程度か。

 原田氏 比率はよく分からない。

斉藤博氏(民主・道民連合)質疑  発覚防止 本部の職員が指導
 斉藤氏 道外に出向したときの裏金の実態は。

 原田氏 一九七五年から計七年間、警察庁と二県警(熊本、山梨)の捜査二課長をした。警察庁では、月五千−一万円くらい、弁当代名目の金をもらっていた。国会待機が深夜に及ぶことも多く、そういう時の食事代だったと思う。他県の二課時代は交際費のような名目で受け取っていた。

 斉藤氏 現職時代に改善を主張したことは。

 原田氏 いろんな会議で提案した。(釧本本部長時代には)裏金管理をしていた次席らを集め検討してくれと。しかし巨大な警察組織では方面本部長も単なる歯車の一つ。改善に動きだすことはなかった。

 斉藤氏 裏金の管理体制は。

 原田氏 つくる方は、裏金を現金化するまでは会計担当者。使う方の管理は、警察署であれば副署長、本部なら管理官ないしは次席。

 斉藤氏 裏金づくりを知っていた人は。

 原田氏 捜査員らは(偽造領収書などを)つくるので、うすうすは認識し、会計職員、副署長のそばにいる庶務係らは十分に知っていたと思う。

 斉藤氏 旭川中央署長のとき異動時に裏金の扱いや裏帳簿の決裁などに引き継ぎはあったか。

 原田氏 (署長同士の)正規の事務引き継ぎは行ったが、裏金の引き継ぎはなかった。離任時は、副署長が新しい裏帳簿を持ってきて、私の離任時の残金が記入されていた。署長在職中の使途は裏帳簿を保管していた副署長だけが知っている。私は判を押しただけで中身は分からない。

 斉藤氏 会計検査院の検査について。

 原田氏 私が会計検査を受けたのは二回。一回目は道警本部生活課長時代、二回目は釧路方面本部長時代。生活課長時代は私自身が検査員に説明した。釧路の時は警察庁や道本部会計課職員が(偽装が発覚しないよう)指導に来た。

 斉藤氏 架空の事件をつくり上げて、捜査費や報償費を捻出(ねんしゅつ)したか。

 原田氏 会計検査に直接タッチした生活課長のときは、初めての体験で大変苦労した。問題の一つは(捜査協力費の)金額が例えば五千円、一万円、二万円と書いてあること。この金額の差をどう説明するか。全く捜査していない会計担当者が勝手に書類をつくっているので、そんな支出はないからだ。説明する私は、情報の質がどうだとか、協力者の立場がどうだとか、そういうことを考えた。もう一つは架空の事件だから、事件をつくらないといけない。実際の事件で捜査員を道内各地や東京に派遣しても、旅費は裏金から支出し(正規)書類では違う日程で出張させたことになっている。(架空事件を)説明できるようメモをつくったが、何十件もあり大変な作業だった。

 斉藤氏 稲葉事件の背景に裏金づくりがあったのではないか。

 原田氏 いろんな背景を明らかにするため、彼の(公判で)情状証人に出ようと一度は決意した。結果的に出なかったが、彼の供述調書を読み、彼の言うことが正しければ、やはりという気持ちだ。彼の捜査には協力者が絶対に必要。しかも(暴力団員など)犯罪を起こす可能性がある虞(ぐ)犯者が協力者で、かなり金を使わないとうまくいかない。協力者をどう管理し、費用をどうするかという問題を解決できるか非常に心配した。

 斉藤氏 道警の内部監査の実効性は。

 原田氏 内部監査という言葉が概念として浮かんでこない。会計課の指導みたいな形で時々行われていたかもしれないが、内部監査という認識はなかった。ただ、内部だろうと外部だろうと、金の問題については部内の人間は語った場合のリスクを十分認識しており、真実を語らないだろう。

 斉藤氏 弟子屈署元次長の斎藤邦雄さんが住民監査請求を出した。

 原田氏 一人でやっていた私の窮状を見かねたのだと思う。心強いバックアップだった。一緒に行動したいと言ってきた方はいるが、私は行動を起こしてから、多くの方から激励をいただく一方、いやがらせの手紙も多少あった。それを一番いやがったのは家族。だから、申し出は「陰でバックアップを」と断った。

岡田憲明氏(フロンティア)質疑  捜査協力 危害及ばぬ人もいる
 岡田氏 道庁の不正経理問題で道庁の経理が改善されたとき、道警でなぜ改善されなかったのか。

 原田氏 道警は国家予算があるので国全体の問題になり、大変なのではないかと。もう一つは警察は階級組織で、改革は難しいと。自浄能力を発揮できるか心配だった。

 岡田氏 (道監査委員の監査で)捜査協力者への聴取は道警が「信頼を損なう」という理由で進んでいない。現職時代、捜査協力者の身が心配になる事態はあったか。

 原田氏 私は、正規の手続きで報償費を捜査協力者に支払う決裁をしたことは一度もない。ただ、中には危害のある人もいるし、そうでない人もいると思う。

 岡田氏 道警が会いたいと言っていることを断っているが。

 原田氏 それまでの道警の対応から、公正な調査はしてもらえないと理解している。

 岡田氏 道警の内部調査が道民の信頼回復の道だと思うが。

 原田氏 (組織的裏金づくり)システムは、道警上層部はよくわかっている。内部調査は本当に必要かと率直に思う。

 岡田氏 改善方法についてどう思うか。

 原田氏 いかに現場の警察官が捜査費や報償費を使いやすいようにできるかの一点にかかっている。例えば毎月、予算の内示がいくらきているかを言えばいい。(今は使用基準がないが)金額や対象も基準化する。そうすれば道民も捜査に協力してくれるし、捜査活動も活発化し、検挙率もあがる。それをやらない限り、上でシステムを変えてもうまくいかない。

荒島仁氏(公明)質疑  旅費監査 捜査には支障ない
 荒島氏 裏金づくりは国費の旅費、捜査費、道費の報償費、旅費、日額旅費、参考人旅費などに及んでいたと述べている。二〇〇三年度の道予算では報償費一億千八百万円、旅費は十六億九百万円。証言が事実なら報償費以上の新たな疑惑が生じる。証言が事実か確認したい。

 原田氏 私自身、所属長時代に正規の予算処理に必要な決裁を一度もしたことがない。これが最大の根拠だ。在職中、ずいぶん出張したが、一度も正規の旅行命令簿を書いた記憶がない。自分の部下が旅行する時も報告を受けるが、旅行命令簿に決裁したことはない。

 荒島氏 庶務規定通りやっていなかったと。

 原田氏 会計処理上の旅行の規定について知らなかったということだ。

 荒島氏 旭川中央署の報償費に絡む住民監査請求で、捜査員への調査を道警は捜査に支障を来すと拒否した。今年の定期監査で旅費の洗い出しをしたら、捜査に支障を来すことになるのか。

 原田氏 監査時が事件(捜査)の真っ最中なら問題だが、捜査終了後なら、例えば釧路から札幌へ出張させましたと話すぐらいでどんな支障を来すのか、理解できない。

 荒島氏 ぜひ、道警と会っていただきたい。

 原田氏 現時点では考えていない。

花岡ユリ子氏(共産)質疑  流用 国費、道費の区別なし
 花岡氏 接待した上級官庁や他の官庁名は。

 原田氏 署では方面本部や道警本部、道警本部では警察庁。私のデータを見れば分かるが、内容は控えさせてほしい。

 花岡氏 共産党に来たメールで「私は原田さんが防犯部長時代に道警本部にいた。会計課は国費、道費が来ると、各部への内示前に本部長予算として飲食費を含め取ってしまう」とあった。

 原田氏 厳密に裏金をどれが国費、どれが道費と区別できる立場になかった。ただ国費、道費ほとんどの予算に及んでいたのは明らかだ。

 花岡氏 (この)文章で芦刈本部長、佐々木友善総務部長は(裏金)システムを知っていると。

 原田氏 現在のことを承知していないので確定的な話はできない。

 花岡氏 (裏金は)道議の接待に使われていたというが、「一九九一年十二月十六日、道議会総務委員会委員長、委員による年末特別警戒視察激励計画」という資料に原田氏の名前がある。

 原田氏 (接待が)あったのは間違いない。(二次会も)行った気がする。

 花岡氏 稲葉事件の公判で証言できなかった事情は。

 原田氏 私の知る彼は非常に優秀な部下。彼が昇任試験に合格したとき「将来はこうやりたいんだ」という詳細な手紙を送ってきた。その一年後に事件があり、落差にびっくりし、担当弁護士のところに行ったが、私と弁護士の目的にずれがあった。まだ問題があるが、現段階では言えない。

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