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| 裏金問題に関する内部調査の「中間報告」があった13日夜。警察官は、ススキノの居酒屋でケンカの仲裁に向かった。裏金をつくらされていた一線の警察官の思いは上層部に伝わっているのだろうか=13日午後10時、札幌市中央区 |
道警上層部が「組織的裏金を認める」方向で準備していた六月下旬。札幌市内のある警察官が、取材班に現場の思いをぶつけてきた。五十代前半の巡査部長。制服姿で街をパトロールする「地域警察官」である。
「警察では幹部の言うことは絶対じゃありませんか。逆らったら、それなりの警察人生を最後まで歩かされます。家族がいるから、みんな幹部の横暴、君主制に仕方なく従っている。一般の署長でさえ逆らえば左遷か辞めるかです。(本部長などの最高幹部が)組織を改善しないで、だれに変える力があるのですか」
警察は上意下達が鉄則の階級社会であり、上部に対する批判は絶対に許されない。裏金問題が飛び出した昨年十一月以降も、職場内で公然と「おかしい」と声を上げた警察官は、おそらく皆無に等しいだろう。
時々、署内に「目安箱」を置く署長がいるが、本音が入ることはない。そんなことをすれば、警察官人生は終わる。欧州のように労働組合もなく、現場の声が上に届くことはない。失望した警察官は自己を殺すか、辞めていくだけだ。
■情けない…
そうした中、道民の激しい批判を一身に浴びているのは、道警本部庁舎に陣取る上層部ではなく、現場を走り回る警察官だ。そして彼・彼女らの胸中には、言いようのない思いが蓄積している。
「現場はいま、本当につらい。士気も下がっているし、容疑者には『身内を調べろよ』とまで言われる」と札幌市内署のベテラン捜査員。内部調査委員会の一員になった五十代の刑事は「(七月の)参院選の選挙違反捜査をやりたかったのに。みんな知っていることを、なぜわざわざ調査するのか。情けなくて仕方がない」と訴えた。
ほかにも「小学生の息子が学校でいじめられた」「夫が警察官と知られるのを妻がいやがる」といった嘆きは枚挙にいとまがないが、しかし、それぞれの声は組織内部に沈み込んだままだ。
道警の芦刈勝治本部長は十三日夕の記者会見で、裏金は「それぞれの部署で、慣行的に行われていた」と言い切った。「裏金づくりは道警本部の指示」「内部の定期監査は裏金の隠ぺい」といった証言は数え切れないほど出ているのに、道警本部の関与を真っ向から否定し、裏金はあたかも各部署で自然発生的に始まり、継続していたかのように語ったのである。
■コマの一つ
道警関係者によると、今年三月に道警を退職した百数十人のうち、定年前の早期退職は三割を占めた。ある現職幹部は「この十月には早期退職の希望者が増えそうだったが、人事が辞めさせない工作をした。特に警視以上は『辞めるなら(裏金で)処分を受けて(返還して)から辞めろ』と言われている」と明かす。
裏金問題を告発した元釧路方面本部長の原田宏二氏は同本部長時代、裏金問題の改革を志したが、部下や周囲の反対で実現しなかった。原田氏は「警察庁を頂点とする警察組織では(大幹部と思われがちな)方面本部長もコマの一つ」と語っている。
その警察庁は、道警が組織的裏金づくりを認めた十三日、「道警と連携してさらに事案の解明を進める」という、人ごとのようなコメントを発表した。
札幌市中央区の四十代の商店主は最近、制服警察官を見ると腹が立つ。「裏金問題で悪いのは上層部」と分かってはいた。それでも、無差別に自転車を止めて職務質問する姿を見ると、「職質はまず署内でやれ」という思いを抑えきれない。
組織の論理というよりも、「上層部の論理」で決着を図ろうとしているうちに、現場警察官も市民も、やるせない思いを沈殿させている。 | |