警察「裏金」 取材班の中間報告



道警裏金問題

<2> “お飾り” 公安委員会 機能せず
2004/04/30(金) 朝刊
 三月下旬。札幌市内のある警察署で、「適任者探し」が進んでいた。

 「だれか、いい人はいないだろうか。(道警本部に)推薦できる人を報告しなきゃないけないんだ」と同署幹部。今夏、道公安委員五人の一部が任期切れになるため、本部で推薦人の名簿作成が始まったのだという。

 警察法では、国家公安委員と都道府県公安委員は、首相と知事がそれぞれ国会と都道府県議会の同意を得て決める、とされている。公安委員は警察を管理・監督し、指示に従わない警察庁長官や警察本部長の更迭を要求する権限も持つ。

逆に「監督下」

道議会に出席した佐野文男・道公安委員長(左)と芦刈勝治・道警本部長。佐野委員長はこの日、公安委員長としては35年ぶりの質問を受け、答弁に立った=3月2日、道議会本会議場
 しかし、公安委員も「警察一家」の一構成員にすぎないとしたら−。

 警察はふつう、自らが選んだ公安委員候補者を知事に推薦し、「知事や議会は道警の推薦者を追認するだけ」(道総務部幹部)。警察に批判的な人物は推薦しないという暗黙の了解があり、「警察をよく理解してくれる人」(道警幹部)しか推薦されない。

 こんなこともあった。

 三月下旬。取材班は、佐野文男・道公安委員長への取材を申し入れた。窓口は、道警本部内にある「道警総務部公安委員会補佐室」。すると、道警職員でもある担当者は間髪を置かずに、こう返答してきた。

 「取材は(道警本部の)総務課長の了解を得なきゃいけないんで(受け付けるかどうかも)即答できません」

 四月上旬に取材が実現すると、道警広報課職員が立ち会い、「道警の内部調査を監視する」などとする佐野委員長の言葉を克明に記録した。第三者として警察を監督するはずの道公安委員会が、実際は道警の監督下にある−。それをあらわにした出来事だった。

答弁にも疑念

 道警を皮切りに、全国で噴出する警察の裏金疑惑。その過程は、公安委員会の無力さも浮き彫りにしたと言ってよい。

 三月三十日の参院内閣委員会では、道警裏金疑惑を追及する野党議員の質問攻勢に対し、国務大臣の小野清子国家公安委員長は警察官僚が用意した答弁書の棒読みを続け、追い込まれると、「とにかく警察の自浄能力を信じてほしい」。この時、裏金疑惑は静岡、福岡両県警などに飛び火。裏金づくりは全国で行われていた疑いが濃くなっていたにもかかわらず、小野委員長の口からは「全国調査を求める」の一言が出なかった。

 裏金追及一色となった三月の道議会では、佐野委員長が本会議で答弁に立ったが、道公安委員長の議会発言は実に三十五年ぶりだった。道警に内部調査を求めた公安委員の「監察指示」にしても、道警と入念な打ち合わせを経た結果ではないか、との疑念が消えない。

 警察の事情に詳しい作家の宮崎学氏によると、仮に警察に批判的な人物を公安委員に据えても、警察はたちまち取り込んでしまうという。

 「ある県で数年前、警察に犯人扱いされた経験を持ち、警察に極めて批判的な人を知事が公安委員に据えた。誰もが驚く人事だったけれど、今や彼は警察の最大の理解者。それほど、『抱き込み』はすさまじかった」

 道公安委員の中には裏金問題が沸騰する最中、知人に「こんな騒動に巻き込まれるとは思ってもみなかった。名誉職と思っていたのに、本当にいい迷惑だ」と漏らした人もいる。

 機能不全から脱する意欲も見えず、「お飾り」との批判が絶えない組織。それを熟知しているはずの芦刈勝治本部長は二月の記者会見で、外部の人間を入れずに公正な内部調査が可能かと問われ、「(道民の代表の)道公安委員会に適宜報告し、指導を受けるので、厳正な調査ができます」と胸を張ったのである。