警察「裏金」 取材班の中間報告



道警裏金問題

<4> マスコミ対策 口封じに「鉄の団結」
2004/05/02(日) 朝刊
 四月のある夕方。札幌市内を車で移動していた取材班メンバーの携帯電話が鳴った。つい先ほどまで会っていた道警OBからである。

身内を尾行?

警察と報道のせめぎ合いは続く。弟子屈署裏金疑惑をめぐる住民監査の意見陳述を終え、報道陣から質問を浴びる道警の佐々木友善総務部長(当時)=3月26日、道庁別館
 「やられた。おれも知っている(道警の)警備の男が後ろにいた。(振り向いたら)顔をパッと伏せ、脇に消えたが…。尾行されていたかもしれない。あんたも気をつけた方がいい」

 OBによれば、この人物は道警本部警備部所属の、いわゆる「公安の人間」。取材を終えて量販店に入った際、気付いたという。

 OBが見誤った可能性もあり、「尾行」が事実かどうかは判然としない。ただ、一連の裏金疑惑取材で会った二百人超の道警関係者は、OBも含め驚くほど「公安」の影におびえていた。

 会計業務に精通するあるOBは、待ち合わせ場所を常に転々とさせた。「発信履歴を調べられたら、自分が話したと簡単にばれる」と言い、公衆電話でしか連絡して来ない関係者もいる。「備(び=警察内部で『警備』を指す隠語)は甘くない。情報源になっている人物を必ず割り出し、圧力をかけてくる」と語るOBもいた。

 再就職の世話を受けるなど、退職後も警察と深くかかわる人は数多い。「裏金問題をしゃべったら不当な扱いを受けるだろうし、そこには居られない」という思いは、OBに共通する。「警察一家」が生んだ「鉄の団結」は、それほど深い。

止まらぬ脅し

 「報道機関に(通常の)事件情報を流した者は、裏金情報も教えていると認定する」

 裏金疑惑が大きくなり始めていた昨年十二月。道警本部の捜査部門に対し、こんな「指令」が出された。発信元は総務部幹部。各メディアの事件・事故報道を詳細に点検し、公式発表と違う内容があると、当該の捜査部門に出向き、同様の「指令」を繰り返した。

 この間、道内の各警察署に道警総務部から「北海道新聞の購読を中止するように」との指示が出されたこともある。芦刈勝治本部長ら幹部の記者会見をめぐっては、結果的に一部実現したものの、事前に「カメラを入れさせない」「自由な質問は受け付けない」という要請が道警側から道警記者クラブ(加盟十八社)に対して行われ、その都度、これを押し返そうとする報道側との問答が続いた。

 「これまで報道機関と道警は、ずっとうまくやってきた歴史がある。それをなぜ、今になって壊そうとするのか」

 裏金の事実関係には触れず、こう詰め寄ってきた最高幹部もいる。そんなことがあるたび、取材班は逆に問い返した。

 「現場の苦労はよく分かっている。道警の誰かが憎いとか、そういうことではない。警察と報道の関係も他の取材対象と同様、是々非々。税金の使途に不正の疑いがある以上、報道するのは当然ではないか」

 道警は四月の人事異動で、取材窓口となる総務部広報課幹部の顔ぶれを一新した。新任課長は滝川署長からの着任で、広報課勤務はおよそ十年ぶり。物腰が柔らかく、「マスコミ対応では道警随一」(道警関係者)との評が高い。

 そのため、この人事が決まった直後、関係者の間では「道警と報道機関が『手打ち』を模索するのではないか」との観測も広がった。

 ただ、道警幹部からは「道内でテロが起きたら情報が入らなくなり(紙面は)干上がるぞ」「おたくの不祥事もいっぱい知っているんだ」といった声もやまない。

 警察の裏金問題は現にいま、全国で拡大中だ。「是々非々」もまさに、これから真価が問われる。