■幹部は本当に知らない? 何らかの形で関与か
 |
| 道議会総務委員会で、旭川中央署に続き、弟子屈署の裏金づくりを認めて陳謝する芦刈勝治本部長(右)。中塚幸男総務部長とともに、じっと目をつむり、約10秒間、頭を下げ続けた=4月6日、道議会 |
各所属(署や本部各課)ごとに現場が書類を偽造してつくった裏金は、次席や副署長、次長らナンバー2が管理し、トップらに還流し自在に使う−。全国の警察で噴出する裏金問題には、こんな共通の構図がある。
元釧路方面本部長の原田宏二氏や元弟子屈署次長の斎藤邦雄氏らによれば、道警も例外ではないという。
原田氏は三月、道議会で「道警上層部は(裏金づくりの実態を)よく分かっている。内部調査は本当に必要かと率直に思う」と語った。
道警には百五十九の所属があり、部長、課長や次席、参事官など数百人の幹部警察官が裏金にかかわっている計算だ。道警で芦刈勝治本部長に次ぐ地位にあり、裏金問題調査を進める中塚幸男総務部長はかつて、本部厚生課次席や警務部管理官、二カ所の署長などを務めている。原田氏の証言通りなら、中塚氏も裏金づくりの実態を知り抜いているはずだ。
島根悟警務部長は、道警と同じく裏金問題が発覚した福岡県警で公安一課長などを務めた。芦刈本部長も、山口県警の捜査二課長などを歴任している。二人はともに、国家公務員上級職にパスした、いわゆる「キャリア」だ。
キャリア、そして生え抜きのノンキャリアの幹部は、いずれも裏金づくりに何らかの形で関与していたとみられるが、議会答弁や記者会見では人ごとのような発言を繰り返している。
■いつまで裏金づくり 「昨秋まで」との申告
「(裏金づくりが発覚した)二○○三年十一月ごろまで、領収書を偽造していた」。五月十八日、道警の薬物捜査の協力者だった女性が、道監査委員にこう申告した。
申告で決定的に重要な点は、その時期にある。総務課長など道警の一部幹部は、裏金づくりが以前、行われていたことは認めている。しかし「二○○○年度までは」とのただし書きつきだ。
弟子屈署に関する内部調査でも、○一年度以降の予算執行は適正と結論づけた。根拠は「警察改革に伴う意識改革や、二○○○年度に導入された(報償費より執行が簡易な)捜査諸雑費制度」(島根悟警務部長)。進行中の特別調査で最終的に道警が不正を認めることがあっても、おそらくは「二○○○年度まで」になるとみられる。
しかし、この女性の申告によって道警の主張は根底から崩れる可能性がある。斎藤氏も現職から確認した話として、裏金づくりが○三年十一月まで行われていたと指摘。複数の現職も同様の証言をしている。北見方面本部警備課の架空領収書問題も発生は○二年度だ。
■何に使われた 核心は接待、ヤミ手当
旭川中央署と弟子屈署の裏金を認めた際、道警は「不適正経理」との表現を使い、横領罪になりかねない私的流用は認めなかった。裏金の使途は捜査員の「激励慰労」や「夜食、補食」などだったとし、今後の調査でも同様の結果を出すとみられる。
これに対し、ある道警OBは「夜食が出ることはなかった。捜査の打ち上げも割り勘だった」と証言。
「転勤時には署長名のせんべつを五千円受け取った。大きな署なら数十人だから年間数十万円。署長の給与ではまかなえない」という。
せんべつには、もう一種類ある。裏金の残金を署長らが転勤時に全額もらっていくもので、一回に数百万円を持ち去った人がいたとの証言も少なくない。
一方、原田氏は五月二十五日に仙台地裁であった宮城県警報償費返還訴訟で、警察庁からの出向幹部(キャリア)にも交際費などとして現金を渡したと証言した。裏金疑惑の核心は、こうした幹部へのヤミ手当や交際目的の支出、議会対策などの接待、さらには警察庁に対する上納にあることを示唆している。
■「悪いのは予算制度」!? 強制力ある調査必要
「私的流用はない。業務に使った。機動性のない予算の枠組みに問題がある」
裏金問題について、これまでの道警の説明を要約するとこうなる。
一見、理解を得やすい説明だが、根本的な矛盾をはらむ。全国市民オンブズマン連絡会議幹事の清水勉弁護士は「捜査に柔軟、迅速に対応するため裏金をつくったとしているが、使途は慰労会など、捜査の迅速性と無関係なものが多い。よく読めば理由は、ちぐはぐだ」と指摘する。
当初は不正を否定していたのに、逃げ切れなくなると予算制度のせいにする。こういった姿勢にこそ、道民は「子供だまし」と怒りを沸騰させているのだ。
「自らの問題は自らで解決する」と繰り返す芦刈本部長の言葉も、「部外者に警察の経理は触れさせない」と言っているに等しい。
犯罪の容疑者が「自らで解決する」と抗弁すれば、道警は捜査をやめるのだろうか。
今求められるのは、自家撞着(じかどうちゃく)に陥った道警の調査ではなく、道議会の百条委員会のような強制力を持った第三者の調査だ。 |