夕張よ 再建への助走

<上> 不安
<中> 計画策定
<下> 護送船団


関連ニュースへ
<上> 不安 市民報告にも足かせ
2006/09/30 (土) 朝刊
「自己決定権なくなる」

財政再建団体の申請を可決した市議会。傍聴席は報道陣が埋め、市民の姿は少なかった=29日午前
 九月上旬、夕張市内の居酒屋で五人の男の“送別会”が開かれた。「いままでありがとう。こうなって悔しい」。涙を流して訴える男たちのあいさつに、映画祭などを一緒に支えてきた二十人の市民は目頭を熱くした。

 五人は、今年三月まであった「ゆうばりマウンテンシティ実施機構」(MCP)のメンバーだ。MCPは、「夕張を三百六十五日イベントのある町に」との趣旨で、一九九七年にできた。映画祭をはじめ、各種行事の裏方役を担ってきた。

 イベント担当の市職員の時間外手当が多額になり、外部委託化したことが設立の背景だった。市長が理事長を務める任意団体で身分が不安定なため、今春、第三セクター・石炭の歴史村観光の職員に採用されることとなり、五人はそろって、新設の事業本部に所属していた。

 そこへ、市財政破たんに伴う経費削減の波が襲った。MCP事業は映画祭も含め、軒並み中止となり、事業本部は解散。一人は退職し、古里へ。三人は、三セクが運営するマウントレースイのスキー場とホテル、一人は石炭の歴史村内へ移った。元メンバーの一人は「市が決断しないから、三セクの将来が分からない。飼い殺しみたいな日々ですよ」と、慣れない仕事場でつぶやく。

 「何とか、四日に示した『財政再建に取り組む基本的な考え方』で、再建団体申請の議案を通してもらえないか」。二十五日、夕張市議会の会派代表会議に出席した後藤健二市長は、力なく懇願した。第三セクターが運営する観光施設の存廃や、市立総合病院運営主体の具体策を、定例市議会の開会中に示すことを断念する発言だった。

 「国や道と協議中」と繰り返す市長。市議側は「いま否決したら(国や道から)見放される」と、まちの将来像が見えないまま、再建申請議案を可決する方針を認めた。再建方針の主導権はすでに道へ移り、市や議会の手を離れている現状が背景だ。

 このため住民への説明会は、再建団体入りの表明後三カ月以上たった十月四日からにずれ込んだ。二十九日の本会議後、記者会見した市長は、「再建計画の基本的な考え方を決めてから、住民理解を求めようと思った」と釈明した。

 しかし市からの情報が極度に少ない分、市民の不安は膨らむ一方だ。市はすでに補助金カットなどの経費削減策を次々打ち出し、額は九月定例会への提出分だけで一億五千万円に達した。市民会館大ホールの閉鎖、小中学校校舎窓ふきの業者委託の中止−。「鉛筆一本買うにも国の許可がいる」という再建団体の厳しさが、早くも夕張を包んでいる。

 「大ホール閉鎖は夕張文化の喪失だ」。二十五日夜、市民有志による市民会館問題を考える会合が開かれた。文化団体関係者からは「なぜ、市は閉鎖の考えを事前に伝えてくれなかったのか」との不満が出る一方、「市に反対を訴えても仕方ない」との声も目立った。市民は怒りの矛先を向ける相手さえ失っている。(横井正浩)


 夕張市議会が二十九日、市の財政再建団体入りを正式に可決したことで、まち再生への助走が始まった。住民生活はどう変わるのか。同様に財政難に苦しむ自治体への影響は。市、道、国それぞれの状況を報告する。