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| <下> 民の力 |
| 2006/11/16 (木) 朝刊 |
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愛着と気構えを持って
「もしかしたら、変われるかもしんねえ、抜け出せるかもしんねえ」
常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)が舞台の映画「フラガール」で、蒼井優(あおいゆう)演じる主役の紀美子が方言でつぶやくせりふだ。センター開業とフラダンスへの挑戦に、マチ再生の祈りを込めた。紀美子は猛特訓の末、満場の観衆を前に最高の踊りを披露し、映画は幕を閉じる。
| スパリゾートハワイアンズの「ファイヤーナイフ」ショー。出演者が舞台を降り、観客と一体となって盛り上がる | |
劇中では、紀美子の親友が炭鉱を解雇された父と共に旅立つ先として夕張が登場する。映画の生みの親で、東京の映画配給会社「シネカノン」のプロデューサー石原仁美さん(42)は「史実に基づきましたが、炭鉱といえば夕張ですから」と理由を語る。
九月中旬、夕張市内で「フラガール」の上映会が開かれた。三百人近い市民はスクリーンに映し出された手紙の「夕張」の文字に歓喜し、同じヤマの復活劇に涙した。自営業者の男性(75)は「市民一丸となって頑張る勇気をもらった」という。
その思いは、市の財政破たんで十月下旬から休業中の「石炭の歴史村」で働く者の胸にも刻まれた。石炭博物館では、元炭鉱員の肉声による館内案内を始めたところ、台湾をはじめとする外国の旅行会社に「また観光客を連れてきたい」と言われたという。
熊谷隆文館長(49)は「人材活用の大切さを、映画とハワイアンズからあらためて学んだ。再開を信じ、今から新しい事業を準備したい」と話す。
まちづくりコーディネーターで札幌国際大観光学部の吉岡宏高助教授(43)はこうみる。「観光の究極は『あの人に会いに行く』ということ。フラガールでは炭鉱娘だったが、夕張の場合は四割を占める高齢者が主役だと思う。(炭鉱全盛時を知る)その人たちのキラっと光る価値を、どう発揮させられるかにかかっている」
ハワイアンズを成功させた関係者は、夕張再生の鍵をどうみるか。中塚勝次・副総支配人(64)は元採鉱員の立場から「炭鉱の歴史に徹底的にこだわり、石炭博物館を中心に『本物』を伝えることでは」と話す。ダンサー養成所教授で、紀美子役のモデルとなった小野恵美子さん(62)は「フラガールのように心を一つに一生懸命やれるものを探してほしい」と願う。
坂本征夫取締役(61)は「民の力」を強調する。「大成功した旭山動物園のように、従業員の士気を高められる『切り口』を発見する。行政頼りでは限界がある。夕張に愛着を持ち、『おれがやるしかない』という気構えを持った人が住民を巻き込んでいく」。その起爆剤となるのは「やはり映画なのかもしれない」と付け加えた。
石原プロデューサーも映画のマチ・夕張に期待する。「お金は必要ですが、たとえば閉鎖した施設を映画の撮影所にする。あれだけの恵まれた自然。国内外のロケ地として最適です。既存のものから独創性あるものを生み出すことが大切なのでは」と提言する。
「変われるかもしんねえ」。炭鉱を楽園に変えたハワイアンズに、夕張も近づきたい。 |
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