相内俊一教授と歩く 夕張再生考
相内俊一教授と歩く 夕張再生考
<1> 政治の責任
<2> 延命の果て
<3> 地方の反乱
<4> 炭住のきずな
<5> 自治のかたち

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<5> 自治のかたち 「自律」の精神 今こそ
2007/03/12(月)朝刊

 夕張再生への具体的な処方せんを、どう考えるべきか。連載の番外編として、小樽商大大学院の相内俊一教授(60)=政治学・公共経営=に、街を歩いた上での提言を寄稿してもらった。


北炭夕張新鉱跡のトンネル前に立つ相内教授=2月28日
炭鉱町文化

 どうして夕張は、観光事業への過大投資という政策の転換ができなかったのか。「すべて会社持ち、会社任せ」の炭鉱町文化が原因という声をよく聞いた。この気風が、行政への依存と、炭労や市職員組合の支持を受けた市長の天下という権力関係を作り上げた。炭鉱閉山後は、国の旧産炭地域に対する無策と、すべての悪を「国のエネルギー政策の転換」のせいにする市や組合の姿勢が、責任不在の構造を生んだ。

 行政・政治の失敗と、地域の暮らしのありようとを切り離す発想は、どうしたらできるだろう。行政に依存せずに「夕張メロン」をブランド化し維持している農家や農協にヒントがありそうだ。彼らのプライドは、自分たちの「土」「種」「接ぎ木の技術」「組合による厳しい品質管理」など、みな自前で獲得してきたものばかりだ。ブランド維持には、「自律」が必要だ。自律の精神に支えられた自立こそゆるぎない。

行政の使命

 「国破れて山河あり」。仮に自治体がなくなっても一体それが何だと発想してみよう。夕張市民と職員は、新市長とともに、今回の逆境を「自治体が本当にしなければならない使命(ミッション)は何か」を徹底的に見抜く千載一遇のチャンスにできるかもしれない。住民は、自治体がしなくてもよいことは、自分たちがやる。行政ができないからではなく、本当は不要だからだ。そうすることで、逆に教育や医療などの分野での国の財政責任を明らかにできる。

 そこで提案。まずは、自分たちの集落での自治の充実、次いで、隣接集落との協働をすすめていってはどうだろう。いくらストーブを燃やしても暖かくならない、築三十年の市営住宅アパートに残っている数世帯の住民に、比較的新しい棟へと移転してもらうプランも、真谷地(まやち)の集落が声を上げれば可能なはずだ。

 メロン農家の人たちは、たった数キロ先の真谷地から働きにくる人たちが、暑いビニールハウスの中で汗だくになって帰宅しても、家には風呂がなく、四月からは公衆浴場も週に三日しか開かないことをほとんど知らない。コミュニケーションを深めることで、横の相互理解と協力の可能性は十分にある。

 住民は、行政に徹底した情報公開を求めた上で、それをチェックできなければならない。市議会議員候補の選挙公約に、自治体会計を勉強することを盛り込ませるなど、議員の資質アップが必要だ。

転換を急げ

 夕張支援の声は、夕張出身者など一部を除けば次第に低調になるだろう。第二、第三の「夕張」が出現するかもしれないし、マスコミの関心はすぐに冷める。観光施設の引き受け手が決まったことも喜んでばかりはいられない。

 「指定管理者」の企業や団体が、「管理・運用」を効率的に、利潤をあげて行うことができるのは、初期投資がいらないためだ。観光施設は、十年後にどのくらい傷んでいるだろう。その時、民間が新たに設備投資をしてまでは事業継続しないことも覚悟して、五年以内に産業構造の転換を図らなければなるまい。

 夕張からは多くのことを学ばせてもらえる。私は、その授業料のかわりとして、自律的な自治を目指す地域や団体をできるだけ応援していきたい。